行方不明の夫が三年ぶりに「俺、死んだんだ」と行って家に戻ってくる。
それを驚きもせずふわっと受け入れる妻を見て、ほんわか感動ファンタジーなのかと気を抜いていた。
なのに小松政夫さんの部屋の壁一面の美しい花の切り絵から一気に映像で見せつける不安感やぞわぞわ感。
やっぱり黒沢清監督の作品だったよ、ホラーなのかな、、、と頭の中をホラーアンテナに切り替える。
過去の浮気にぶち切れたり、嫉妬させようと過去の恋人の話を嬉しそうにしたり、「本当に行かなきゃ行けないの?」の悲しく縋ったり。いつも比較的意思のしっかりした、ぶれない役か、感情が薄めな役の多い深津絵里さんが、少女のような色んな感情を見せてくれる演技はなんか珍しくて印象的だった。
そして、「悪人」以来に観た彼女の裸の背中がとても美しかった。
今回もだけど深津絵里さんはこんな風な退廃的なセックスシーンがとても似合うと思う。
作品としては地味で全体的にふわふわしてるという印象。
私は祖父母や父を亡くしたばかりなのでら死と生の境界線の曖昧な描き方は奇妙な夢を見ているようで嫌いではなかった。
死人が「生」に後ろ髪をひかれるのではなくて、本当は死んだ人に心が縋っている生きた人間の方なんだろう。
死んだ人の方が結局はそれを穏やかに受け入れて、生きている人間のほうが手放すのが下手なのかもしれない。
最終的にはラブストーリーなのだと気がついたけど、個人的にはそこよりも、人にとっての生きることに対する解釈についてじわじわ考えさせられました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年8月31日
- 読了日 : 2017年8月31日
- 本棚登録日 : 2017年8月31日
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