ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書 2257)

著者 :
  • 中央公論新社 (2014年3月24日発売)
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感想 : 112
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気になる著者、著書があると、入門書とか、ガイドブックみたいなのに頼らず、まずは原著(もちろん翻訳のね)を読む。分かろうが、分かるまいが、とりあえず1〜2冊読んで、自分なりに理解した感じをもって、ちょっと「入門」を読んでみる、というのが、自分の読書スタイルかな?

本はそれ自体が一つの世界で、「人とその思想」みたいに読むのではなくて、テクストとして何が書かれているのか、ということにフォーカスすべし、みたいな考えも結構染み付いている。

ということで、アーレントも、そのパターンで、原著と悪戦苦闘中。

一応、最後までたどり着いたのは、「暴力について」「イェルサレムのアイヒマン」で、主著(?)の「活動的生」と「革命について」は、半分くらいで、先に進めなくなっている。「全体主義の起源」にいたっては、最初の20ページくらいで挫折。

ものすごく難しいという感じでもなくて、一行一行は読めるし、パラグラフもいくつかは読める。読めるだけではなくて、かなり共感を感じる。もしかしたら、この人は、わたしが疑問に思っている問いへの答えをもっているのではないか?と期待を感じる。

が、ページを繰っているうちに、だんだん話しが分からなくなってしまう。

結局、結論はなんなの?
どこに行こうとしているの?
みたいな感じ。

というなか、行き詰まりを解消すべく、分かり易そうなこの新書を手にしてみる。

まさに「人とその思考」というより、「人」にかなりフォーカスした本で、すごく読みやすいですね。

これを読むと、アーレントの思想は、かなり彼女の人生に起きたことを知らずしては理解できないものだったんだという気がしてくる。

というのは、わたし的には「邪道」なんだけど、アーレントについては、著書で完結する人ではない。むしろ、彼女の人生そのものが、彼女の作品だったのだ、という気がしてきた。

と言っても、彼女は行動の人ではなくて、思考の人。

でも、その思考というのが、抽象論、演繹法ではなくて、具体的な経験から、自前のツールをその場その場で作りながら、行きつ戻りつ、考える感じなんだよね。そして、その思考は、具体的な言動と一致している。しばしば、かなり過剰な感じで。。。

という人なので、彼女の本を読んで、すっきり理解ができる、ということにもともとならないということが分かった感じ。

彼女の場合、書簡集も結構膨大なものがあるのだが、もしかすると、彼女の人生という作品、つまり彼女がリアルに他者との関係を大切にしながら生きたというのは、そこに残されているのかも、とか思い始めた。

う〜ん、どこまで読めばいいのかな?

と悩むほど、アーレントを魅力的に感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月30日
読了日 : 2016年12月10日
本棚登録日 : 2017年4月30日

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