存在から発展へ―物理科学における時間と多様性

  • みすず書房 (1984年12月5日発売)
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プリゴジン/スタンジュールの「混沌からの秩序」を読んで、大きな知的な刺激を受けたので、続編のこちらも読んでみる。

日本語タイトルは、「存在から発展へ」であるが、原題は、"from being to becoming"である。

「発展」というより「生成」みたいなほうが、よいのではないかな。というのは、西洋哲学かぶれの言葉の好みではなくて、この本の主張にもマッチしていると思うから。

古典力学のなかにもある不確実性、量子力学のなかにある不確実性(と同様に存在する古典的な確実性をベースとした論理)からはじまり、熱力学の第2法則や複雑系的な確率論的な記述に話は進むなかで、著者は、次のように主張する。

「古典的な順序は、まず粒子があり次に第2法則がくる - 発展のまえに存在がある! というものであった。素粒子のレベルに達するともはやそうではなくなる可能性がある。それは存在の前に発展があることを意味するのだろうか。」

物理学に疎い文系の人間としては、思わず、「そうである」と根拠なしに、強くうなずいてしまうのであった。

が、分かって、賛同しているわけでは、勿論、ない。

そうなのだ、この本、数式がいっぱい書いてあるし、知らない物理学の定理があまり説明なしにどんどん出てくるので、文系的には厳しい本なのだ。

その点、科学史家のスタンジュールとの共著「混沌からの秩序」のほうが、文系には読みやすいだろう。一方、理系の人にとっては、こちらのほうが、ストレートに著者の問題意識に近づけるかもしれないな。

で、著者の問題意識とは、「時間は実在するか」である。

お値段が高いし、難しいけど、トライする価値のある本である。(私は、中古でかって、数式を飛ばしながら、斜め読みしたけど。。。。)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年4月30日
読了日 : 2008年9月20日
本棚登録日 : 2017年4月30日

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