宇宙論大全 相対性理論から、ビッグバン、インフレーション、マルチバースへ

  • 青土社 (2013年9月24日発売)
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「宇宙論大全」

すごい名前である。

プトレマイオスの「天動説」的な宇宙から、コペルニクスの「地動説」になり、ニュートンが数学でそれを記述することに成功し、アインシュタインがそれをさらに一般化する。

というところまでは、順調に展開していった宇宙論であるが、ここからが大変。アインシュタインの方程式は、さまざまな解が存在するらしくて、いろいろな人がいろいろな解を見出し、それをベースにさまざまな宇宙論を導きだす。そこに量子論がからみ、超ひも理論がでてくるし、インフレーション理論もでてくる。宇宙の膨張は加速しているという観察結果もあったり、もう大変で、宇宙論の数はどんどん増えて行く。

というのもまあ仕方がなくて、今や、アインシュタインの方程式の解の数だけ、さらにはさまざまな定数の数値の数だけ、宇宙があってもしかたないということになっているわけ。つまり、たくさんの宇宙がどうもあるとしか考えられなくなって、私たちがいるのはその一つに過ぎない。私たちが認識できるのは、その宇宙の一部。だって、宇宙は膨張しているので、私たちの観測技術がどれだけ進もうが、光のスピードで物理的に見える範囲はきまっているわけ。

つまり、コペルニクス的転換の果てに、私たちは宇宙の中心にいないばかりか、銀河系のなかの一つの太陽の周りにいるだけで、銀河系もそれを含む銀河団のほんの一つで、おそらくは銀河団もさらに大きななんかの固まりの一つかもしれない。そればかりか、私たちがいる宇宙全体が無数に生成する宇宙のひとつでしかない、というところにいるんだね。

ユニバースから、マルチバースへ。

という限りない相対化のあとで、なにもないのではなく、宇宙があって、生命が存在して、人間が存在して、自分が存在する、という不思議。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年5月2日
読了日 : 2014年8月12日
本棚登録日 : 2017年5月2日

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