当初は、へー、という程度だった。
山風が推理物書いてるんだあ、松本清張以降に社会派ミステリが流行ったからこんなムードなんだあ、と思った。
三話目あたりから、いやこれは単なる社会派ミステリじゃないなと思った。
やっぱり山風が書いたらぐっと引き込まれるし、短編なのにすごい長編を読んだかんじになる。
書き方がうまいんですよ。
60年代の作品なので、さすがに古いというところもあるけど、日本人の本質は何も変わっていない。
犯罪の中抜き、声無き傍観者である大衆の持つ卑怯性、SNS自殺そっくりの状況など、普遍的な怖さがある。はっきり言えば日本人社会の怖さを書いている。
そういう意味では山風らしい。
この世は黒いし、これでもかと現実を突きつけるけど、八坂の逡巡の決め台詞に毎回少しの清々しさがある。
うまいんだよねー。
半七捕物帳の昭和版みたいなかんじ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年7月1日
- 読了日 : 2023年7月1日
- 本棚登録日 : 2023年7月1日
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