トロント大学の教授であり哲学者である著者が、右派や左派が陥りやすい謬見についてそれぞれ6テーマずつ扱っている。
「次善の一般理論」について取り上げられている部分が興味深い。アダム・スミスが「神の見えざる手」―完全競争市場は完全な効率性を持つ―と主張したのは有名である。しかし、残念ながら(?)完全競争市場は理論上のものでしかなく、現実世界の競争市場は不完全である。
さて、ここで問題になるのが、現実の競争市場を少しでも完全競争市場に近づけることで、少しでも効率性を高めることが可能なのかである。「次善の一般理論」では、少しでも完全競争市場から乖離している「次善」の競争市場が、大きく完全競争市場から乖離している競争市場と比較して、効率性が高いという根拠は無いと述べている。
物事を一般化、抽象化して考えることで最適解を導けるものもあるが、それがそぐわないものもある。市場の効率性については後者なんだろう。必ずしも一般的なモデルからの乖離が小さい方が良いということにはならないのだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
勉強
- 感想投稿日 : 2013年12月7日
- 読了日 : 2013年12月7日
- 本棚登録日 : 2013年12月7日
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