パラダイス・モーテル (創元ライブラリ)

  • 東京創元社 (2011年11月30日発売)
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感想 : 35
3

こういう小説のことをどう書けばいいのだろう。
讀後すぐ書こうとするのが無謀かもしれないが・・・(読み手には整理する時間が要の小説なのです)
主人公はエズラという男性で、中年の彼は海の見えるパラダイス・モーテルの枝編み細工の椅子に座って少年時代のあることを回想しはじめる。
彼の祖父は突然家族を置き去りに失踪し、死期が近いことを察して自分の故郷、捨てた家族のもとにひそかに帰ってくる。
屋根裏部屋に横たわった死の数日前、老人は孫のエズラにこのような話をする。
失踪して、多種の職業に就いた祖父だったが、甲板員で雇われてパタゴニアに行った時のことだった。
その船で機関士として乗船していたザカリー・マッケンジーが語った話だがと祖父。
自分の小さな頃、住んでいた小さな町に南部訛りの医者一家が越してきた。
その一家は外科医と妻と4人の男女二人ずつの子供たちで、妻は美しく円満な家庭のようだった。
事件は、一家が越してきてから一月もしないうちに起こる。
それは想像を絶する事件だった。
外科医は自分の妻を殺害し、妻をバラバラにして、その妻の両手首と両足首を4人の子供たちの腹部に埋め込んだのだ。事件の発覚後、外科医は死刑になった。
その話を終えた機関士のザカリー・マッケンジーは、白いシャツをまくりあげた。ウエストラインのすぐ上に真横に走る長い傷跡が見えた。
パラダイス・モーテルで寛ぐエズラは、その子供たちのその後を知りたくなる。
ふつうは、この4人の子供の運命を辿っていく過程を書いていくものだが、いえ、書いてはいるのだが、そのエピソードたるやその冒頭の意表をつくショッキングさを凌ぐもので、
少年に蜥蜴を飮込ませシャーマンが釣り人のように糸を手繰って取り出すイシュトゥラム族の儀式の話や、
からだに植物が生えた話や、
串を身体に25本貫通させ、26本目で死んでしまったカーニヴァル藝人の話。
とにかくその筆致の滑りはすざまじく、まるでジェットコースターに乗っているように絶叫もののストーリーが続く。

その4人の子供たちのその後の運命は悲慘なものであったが、
この物語の最後は最初と同じくパラダイス・モーテルの枝編み細工の椅子である。
そして読者のわたしたちも、見たことも掛けたこともないその椅子の上で著者に騙され続けていたことを知るのであった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年11月30日
読了日 : 2021年11月30日
本棚登録日 : 2021年11月30日

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