不思議に魅力的な本。ドライで、別に目眩く面白さがあるわけでもない気がするのにページを繰ってしまうし、いつの間にか武田百合子という人に魅入られている。この人は文章に考えを差し挟まない。なのに、ロシアや中央アジアの地から、心で何かを受け取っているのが読んでいてわかるのだ。その心のありようが、天衣無縫で憧れる。
あるとき私は、これを読みながら無意識に夜のような気分になり、目を上げたら朝の読書だったことを思い出してびっくりしたことがある。10代以来、小説でもこんなふうに静かに入り込んでしまった本があっただろうか。淡々と書かれているからこそ、想像力が泳げるだけの行間があるのだと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年1月15日
- 読了日 : 2021年1月15日
- 本棚登録日 : 2021年1月13日
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