国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ文庫 NF 464)

  • 早川書房 (2016年5月24日発売)
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アリゾナ州ノガレスとソノラ州ノガレス、北朝鮮と韓国を比較することから始め、国家の衰退が政治的制度と経済的制度の相互作用によるものだということを見ていく。

例えば、ジャレド・ダイヤモンドのような地理説は現代世界の不平等を説明するのに敷衍できないし、マックス・ウェーバーに端を発するプロテスタントの倫理が近代的工業社会の隆盛を促す重要な役割を演じているとした文化説も、結局は制度による帰結が文化や心性となるあたり等、他の説との考え方の違いなどを見ていくのも勉強になる。

また、より良い経済政策を知らなかったという無知説について、この間違いを犯す理由は、無知によるものではなく、貧困を生み出す選択をしている、つまり故意であるという話も面白い。

繁栄を達成するためには、いくつかの基本的な政治問題を解決する必要があり、それは安全な私有財産、公平な法体系、公共サービスの提供(物品を運ぶための道路と輸送ネットワーク)、契約と取引の自由等といったものになるが、マックス・ウェーバーが示した国家の本質「合法的な暴力の独占」に対して、包括的な経済制度を取れるか収奪的な経済制度となるか、その違いが決定的な差となる。

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感想投稿日 : 2020年9月15日
読了日 : 2020年9月15日
本棚登録日 : 2020年9月12日

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