平成犬バカ編集部 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2021年8月20日発売)
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感想 : 4
4

犬が大好きだ。
幼稚園の頃は、毎日30分は近所の秋田犬をフェンス越しに撫でていたし、小学生の頃は実家で柴犬とポメラニアンを飼っていた。そして自宅を建ててからは、ずっと大型犬が家族の一員だ。現在は二代目。
なので「犬」と付く本が目に入ったら基本的に読む。そこで本書。「Shi-Ba」という日本犬(柴犬メイン)雑誌の誕生から現在までの約20年を追ったノンフィクション。実はそのことを知らずにページを開いてしまった。そしてちょっぴりがっくりした。実は年齢を重ねるごとに小型犬に興味が持てなくなっているのだ。
「柴犬か……。無愛想でちびっこいしなぁ」と思いながらも、せっかく読みはじめたのだからと、半ば無理やり文章を追った。
ところが追えば追うほど、ぐんぐん引き込まれていく。その「熱さ」にだ。同雑誌の編集長は、根っからの犬好きではない。しかし、新築一戸建てを購入したことをきっかけに柴犬を迎えることになる。するとしばらしくて犬バカ愛が爆発。新築住宅をどんなに壊されても許し、自分の欲望のままに突然愛犬を抱きしめる。そして挙句の果てには、愛犬のテーマソングを作詞作曲してしまう。
「えっ、そんなことするのオレだけじゃなかったの!?」
そんな描写の連発だった。「やっぱり」「そうそう」「がはははっ」と共感の嵐。犬好きの気持ちを見事に活写している。もう犬種の好みなんてどうでもいい!
編集長をはじめとする登場人物の異常ぶりは賞賛に値する。同時にそれを臨場感あふれる筆致で描く作者の力量もすばらしい。
なお、著者は「おわりに」で「犬の現代史を書きたくて、同雑誌を題材にした」と書いているが、雑誌の内容が面白すぎて現代史部分が浮いて感じることがあった。そこが残念(勉強にはなったけど)。なので惜しくも☆5にはならなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月1日
読了日 : 2023年3月1日
本棚登録日 : 2023年3月1日

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