学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史 上 1492-1

制作 : レベッカ・ステフォフ 
  • あすなろ書房 (2009年8月1日発売)
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本棚登録 : 367
感想 : 49

自由と平等を標榜し,世界を正しいあり方へと導いてきた,とするアメリカ人の歴史観・愛国教育が,実態とはかけ離れていることを喝破した内容.ネイティヴアメリカンに対する迫害は,「モヒカン族の最後」などである程度知っていたことではあったが,黒人差別が白人の生来的なものではなく,底辺層の白人と黒人の団結を妨げ,階級内での分断を図るため,富裕層が恣意的に貧しい白人に便宜を図ることで生じていったというのは新鮮だった.先進的と崇められる憲法や独立宣言も,貧民層の怒りを植民地支配を行うイギリス本国に向けるための詭弁でしかなく,保護の対象とする人民に貧民や黒人,女性は含まれていなかった.奴隷解放で有名なリンカーンですら,奴隷の解放を第一義としていたわけではなく,戦局の推移に伴い結果的に奴隷解放を進めたに過ぎず,しかも南北戦争後,戦争中に約束されたはずの,黒人に対する法的・実効的な保護は次第に覆されていった.19世紀後半に中国からの移民がいたというのも意外.過酷な労働環境の是正に向け立ち上がる下級労働者を,政府が武力で鎮圧していた様は,近代の全体主義国家と何ら変わりない.結局,建国当時から,富を持つ者がすべてを牛耳ってきた国だということが,改めて浮き彫りになる.黒人や女性の差別に抵抗する運動がどのようにして起こってきたかということについて,特に勉強になった.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文庫・新書・単行本 - 政治歴史
感想投稿日 : 2018年11月17日
読了日 : 2018年11月17日
本棚登録日 : 2018年1月21日

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