実力も運のうち 能力主義は正義か?

制作 : 本田由紀 
  • 早川書房 (2021年4月14日発売)
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 「能力主義」を疑え。

 なぜトランプ政権が誕生し、ブレグジットが起こり、世界各地でポピュリストが支持されるようになったのか? そこに、自らに尊厳を持てなくなった人たちの存在を見る。そしてそれは、「能力主義」を推し進めてきた結果なのだという。
「勝者は自分たちの成功を「自分自身の能力、自分自身の努力、自分自身の優れた業績への報酬に過ぎない」と考え、したがって、自分より成功していない人びとを見下す事だろう。出世できなかった人びとは、責任は全て自分にあると感じるはずだ。」そしてそれが学位を持つものと持たないものの決定的な断裂を生んでいるのが、現在のアメリカ社会という。

 最後に著者はこう書く。「人はその才能に市場が与えるどんな富にも値するという能力主義的な信念は、連帯をほとんど不可能なプロジェクトにしてしまう。いったいなぜ、成功者が社会の恵まれないメンバーに負うものがあるというのだろうか? その問いに答えるためには、われわれはどれほど頑張ったにしても、自分の力だけで身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない。自分の運命が偶然の産物であることを身にしみて感じれば、ある種の謙虚さが生まれ・・・」「能力の専制を超えて、怨嗟の少ない、より寛容な公共生活へ向かわせてくれるのだ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 思想
感想投稿日 : 2021年6月24日
読了日 : 2021年6月24日
本棚登録日 : 2021年6月24日

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