中世の罪と罰 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (2019年11月13日発売)
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感想 : 4
3

第一章として「お前の母さん……」から始まるのだけど、このトピックが衝撃的だった。

「おまえのかーさん、でーべーそー」は幼い頃に受けた悪口の一つで、そういえば、お前の父さんや婆ちゃんみたいなバージョンはなかったなと思う。

この悪口が、かの有名な「御成敗式目」では、軽くて拘禁、重いものだと流罪に値するというのだから驚きだ。
そして、当時はお前の母さん……の悪口の真意として、インセストタブー(近親相姦)を示していたと思われる記載もあるようだ。
共同体にとっては穢れをもたらす忌むべき事柄であり、その名残が今日に残っているのだと考えると、ちょっと背筋が冷たくなる。

こうしたケガレ観は、場所にも現れる。(第二章「家を焼く」)

第三章では、耳切り、鼻削ぎ刑について。
焼印、刺青刑も同様に、容貌を変えることで通常の暮らしを出来ないようにするという意図だ。
この耳切り、鼻削ぎについては、癩病との重なりにも言及している。

その他「死骸敵対」「盗み」「夜討ち」「博奕」「未進と身代」など。
それぞれの章はあまり長くなく、しかし偽りのないよう丁寧に論じられている印象がある。

武士という、戦そのものを芸事、生計とする人々が台頭する時代で、いったい倫理とは何を指すんだろうと思いつつ。
親と子との関係や、コミュニティと個人との関係には、時に緊迫するほどの重みを感じる。そして、そういう関係がある時点で社会なのだな。当たり前なのだけど。

面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2020年3月20日
読了日 : 2020年3月20日
本棚登録日 : 2020年3月20日

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