1分間速読法

著者 :
  • フォレスト出版 (2013年5月9日発売)
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本棚登録 : 214
感想 : 31
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読書において、本文の内容の理解と読書スピードは、彼方立てれば此方が立たぬの関係からは逃れられない運命にある。そんな研究結果があった気がするのですが、忘れました。

感想。よくもまあこれほど冗長に書いたものだと思いました。本の殆んどが、1分間で1冊読めたらどんなに素晴らしいかを説き、1分間速読法が既存の速読法とは全く異なる手法であることを述べるのに費消されます。肝心の1分間速読法のやり方は、最後の最後にやっと出てきます。極意はページを捲る技能にあり、完全に習得するには直接指導を受けるのが望ましい、と閉じられます。とても焦らされました。コマーシャルで引っ張るテレビ番組や、延々とスクロールさせるインターネット広告を思わせます。

1分間速読法は、私が(そして恐らく多くの本好きが)思うところの「読書」とは目指すところが違いました。1分間で1冊読む為には、論理、思考、理解しようとする心を徹底的に排して、直感のみを働かすことになります。左脳(論理)を使わず、右脳(直感)で読み、理解しようとしてはいけない。とにかく速度を追求するので考えることを許容しないのです。読んではいけない。感じるのです。

夢を見すぎました。当然ながら、個人の読書能力が上がるわけではありません。遅いスピードで考え考え漸う読めるような本は速読できるはずはありません。内容の理解が伴わない。また、逆に言えば、絵本や小学生向けの読み物程度ならば、高度な思考力は要りませんから、訓練で内容の理解とスピードアップが両立する可能性もありましょう。が、そもそも読むかどうか……。己の専門分野の本ならば、既習事項が多いので高度な思考力は要りませんから、同じく、速度を上げてもそれなりに理解できるでしょう。しかし、新知識を拾うには熟読し左脳(論理)を使わざるを得なくなります……。

ふと思ったのですが、1分間で1冊のスピードを出す場面は案外あるものです。時間配分を誤った試験、朝時間がない中で読む新聞、長時間の立ち読みができない書店、閉館間際の図書館など。それでも「読んだ」なのかしらん。まるで頓智です。

著者は挑発的な書きぶりです。10分間で1冊の速読は遅すぎると虚仮にしておられますが、1分間は極めすぎなのではないかと思います。考えながら読む行為を一切しないのは、結構怖いことではないでしょうか。恣意的な解釈やリーディングミスの原因です。速読と精読は使い分けるのが有意義だと感じます。チーターだって全速力で走り続けることはありません。因みに、私は1冊10分の速読はしますが「遅すぎる」ので紹介するのはやめておきますね。

ところで、この本はよく売れているようです。何故なのか、考えてみるのも面白いかもしれません。

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感想投稿日 : 2017年10月16日
本棚登録日 : 2017年10月15日

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