スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX

  • 日経BP (2021年1月8日発売)
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東芝社長(当時は役員)の島田太郎と、京都大学の人工知能研究者の尾原和啓の共著。「スケールフリーネットワーク」を起点とした日本企業のDXの方向性について論じた内容となっている。

「スケールフリーネットワーク」とは、ノートルダム大のバラバシ教授らが発見した現象で、ランダムネットワークとは異なり、大多数のノードがごくわずかなリンクしか持たない一方で、膨大なリンク持つノード(ハブ)が存在するという、ネットワークの形のことである。
これにより多様な要素が繋がりやすくなり、イノベーションやパーコレーション(何かが飛躍的にネット上で広がる現象)が起こりやすくなるとされる。

著者らはインターネットの普及と日常化フェーズである「一回戦」は、北米企業の独り勝ちとなったと振り返った上で、現在の世界のビジネスはあらゆるフィジカルなものがインターネットを介してつながるフェーズ「二回戦」に移りつつあるとする。

一回戦では「広告」「小売」がサイバー化したが、これはGDP構成比では8%に過ぎない。
対してこれからの主戦場となる製造業はGDP構成比で25%と、はるかに規模が大きい。
だからこそ衰退する日本経済はきたる二回戦に備えて、自社の製品を中心としたスケールフリーネットワークを構築し、本当の意味でのDXを遂げなければならない、というのが本著の主張。

この主張は安宅和人『シン・ニホン』でも著されていたもので、目新しいものではない。しかし、本著では島田氏がシーメンスや東芝での経験や事例を踏まえて書かれているため腹落ち度が高いと感じた。

JTCのDXは非常に難易度が高い。保守的な社員が多い上にデジタル能力が低く、そもそも経営陣がDXとはなんたるかを理解していない。これではDXなど何年かかってもできない。

本著ではDXの手順を「定義」「浸透」「展開」としているが、これを丁寧に、粘り強く進めていくしかないと感じる。
自分も典型的JTC、かつFAを担う企業に籍を置く身として、DXと製品をコアとしたサイバーフィジカルを推進していきたいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年9月8日
読了日 : 2023年9月3日
本棚登録日 : 2023年9月3日

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