帰ってきたヒトラー コレクターズ・エディション [DVD]

監督 : デヴィッド・ヴェンド 
出演 : オリヴァー・マスッチ  ファビアン・ブッシュ  クリストフ・マリア・ヘルプスト  カッチャ・リーマン  フランツィスカ・ウルフ  ラース・ルドルフ  ミヒャエル・ケスラー  トーマス・ティーメ 
  • ギャガ
3.74
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本棚登録 : 417
感想 : 103
4

これは今年劇場で観賞しました。

2015年ドイツ映画。監督・脚本はデヴィット・ヴェント。原作はティムール・ヴェルメシュの同名小説です。
主演はアドルフ・ヒトラー役のオリヴァー・マスッチ。それに彼を売り出すことになるフリーライター・ザヴァツキ役のファビアン・ブッシュ。その他としてはテレビ局の副局長役にクリストフ・マリア・ヘルプスト、局長役にカッチャ・リーマンなど。

ある晴れた日のベルリン。かつて総統地下壕があった場所にアドルフ・ヒトラーがタイムワープしてきた。あまりにも似ている役者と勘違いしたフリーライターのザヴァツキは、彼をドイツ中へ連れ回し彼の姿をフィルムに収めるのであった。Youtubeでその映像が爆発的アクセス回数になっていることを知ったテレビ局は彼をさらに売り出すべく様々な番組へ出演させるのだが・・・。

ヒトラーやナチスネタはタブーであると聞いていたドイツで製作された、ヒトラーをネタにしたコメディー映画です。コメディというかパロディなのですが、ホロコーストをネタに使用したり、ヒトラーをギャグとして扱ったりと一見何でもありの映画のようにも思えるのには驚きました。
しかし、映画の真のテーマとしては、徹底的にヒトラーの存在を笑い飛ばすのと同時に、ヒトラーの言説は知らず知らずの内に人々の心に浸透するものであり、あなたもそのような大衆と同じなのだということを皮肉っていたのだと思います。たびたび挿入されるドキュメント風に撮られた「ヒトラー」と大衆の交わりの場面や、現代ドイツの政治状況や難民受け入れ問題の描写などはそうした方向に向かう可能性を指摘したものであるといえます。

アドルフ・ヒトラー役のオリヴァー・マスッチは、あの服装と姿をしていればまあ似ているようで似ていない気もするしといった感じなのですが(笑)、話し方や仕草などはよく似せた感じで演じていたと思います。特に演説の場面については迫力ある演技で魅せてくれました。
映画そのものについては、ヒトラー映画の集大成を自負しているのか、チャップリンの『独裁者』やブルーノ・ガンツ主演の『ヒトラー 最期の12日間』を始めさまざまなヒトラー映画のワンカットが挿入されていましたが、ヒトラーのパロディの面白さもさることながら、特に『ヒトラー 最期の12日間』の一場面のパロディがあったりしてなかなか楽しませてくれました。
ただ、あまりにもパロディやギャグを意識し過ぎたせいか中だるみ感があったようにも思い、もっと全体の時間を絞って濃縮した方がよりテーマをわかりやすくできたのではないかと思います。個人的にはヒトラーの演説場面をもっと観たかったかな。

この映画や原作小説はドイツに受け入れられたようですが、忘却や風化の故ではなく、批判的な面白さとして受け入れられたと思っています。日本もですけど。
この映画の皮肉が本当に皮肉にならないよう心に留めて欲しいものですね。
それにしてもこのような映画が作られるとは、あきらかに時代は進んでいるのですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国映画
感想投稿日 : 2016年12月23日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年12月23日

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