地政学入門: 外交戦略の政治学 (中公新書 721)

著者 :
  • 中央公論新社 (1984年3月22日発売)
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感想 : 58
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これはおもしろかったです。一気に読み終わりました。本書は題名通り地政学を勉強したいという入門者が最初に手に取るべき本です。私はマッキンダーの本だけはすでに読んでいたのですが、レベルとしては初心者同様で、本書を通じて地政学の理解がさらに深まりとても勉強になりました。ただ他の読者も指摘されているように、地政学という学問自体、科学的な裏付けによる体系化からは程遠い議論がなされているので、特に自然科学系を専門にされている方々からすると、地政学のあやふやな面も本書を通じてだいぶ浮き彫りになるのではないでしょうか。その意味では論者によって議論展開に個性が強くでる学問なので、むしろ哲学に近い気もしました。
そして本書の中では地政学の祖ともいうべきマッキンダー、そして日本にも親しかったというハウスホーファー、さらに「海上権力史論」で有名なマハンの3名について特にとりあげて、それぞれの地政学を解説しています。その意味で、イギリス人(マッキンダー)、ドイツ人(ハウスホーファー)、アメリカ人(マハン)という自国のおかれた状況が全く異なる3カ国の大家について比較できるため、とても興味深いと思います。
 地政学はその特色から、政治、軍事と密接な関係がありますが、近年はビジネスにおいても重要な要素になってきているのではないでしょうか。日本企業がグローバルに展開する際、どのようなルートで販路を拡大すべきか、という点に関しても示唆がある気がします。本書は地政学入門として、地政学の大家の考えを紹介していると同時に、その考えが導かれていた当時の世界情勢の勉強にもなります。お勧めです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年4月26日
読了日 : 2013年11月12日
本棚登録日 : 2023年4月26日

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