文庫 ソーシャル物理学: 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 (草思社文庫 ぺ 3-1)

  • 草思社 (2018年10月3日発売)
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発行からおくればせながら本書読みました。MITのメディアラボに所属しているペントランド先生の本ですが、いかにもメディアラボの本という感じでとても面白く感じました。スマホやソシオメトリック・バッヂと呼ばれるセンシング機器を通じて人々の交流情報や活動情報を集め、そこから普遍的な特徴を洗い出すのですが、ペントランド先生の視点は西洋の個人主義的な価値観ではなく、むしろ東洋のコミュニティ的な価値観からモデルが組まれていて興味深かったです。

ペントランド先生は本文中で、集団をアイデアを生み出すマシーンと表現していますが、私の印象は、あたかも集団が多細胞生物かのようであり、人間はその細胞群のようなイメージを持ちました。あるセル(人間)は外部でアイデアを探求した上で、それをコミュニティ内に持ち込む。そしてソーシャルネットワークを通じて、その新アイデアが浸透していく、というプロセスをビッグデータによって可視化するフレームワークを提示したことになります。これはあたかも人間が「神の目線」を得たかのようであり、以前に読んだ「ホモデウス」の著者が、これからの人間は「不死・幸福・神性」を求めていくだろう、と述べていたのを思い出しました。デジタル全盛時代には否応なく本書に書かれているような社会分析が増えていくのでしょう。そして著者が述べているように、これは一つ間違えるとビッグブラザーが支配する恐ろしい社会を作ってしまいますが、正しく使う事で、流行病の拡散を防げるなど社会をより良い方向に導いてくれるのでしょう。大きな希望と恐怖の両方を感じる不思議な本でしたが、多くの人が本書を読んでおくべきだと感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年5月2日
読了日 : 2019年6月9日
本棚登録日 : 2023年5月2日

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