因果論、そして「歴史の物語論」を超えて提唱するのは、複雑系。でもどうも、複雑系で歴史を説明するのは、釈然としない気がする。貫は「重要なのは、複雑系の特性と歴史システムのもつ構造との具体的な対応関係を確かめる」(p178)と言っているが、本書でそれはできているのか。
あと、貫が構造的把握の事例、物語論を超えた事例としているブローデルは、本当に「物語論」ではないのか。「物語論」がその射程に収めているは、対象を個人とするような出来事史だけなのか。「物語論」は、いかに対象を認識できるかという、人間の認識論的な問題を提示しているのであって、史料解釈のような言語論的な認識のレベルだけにとどまっていないのではないか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
人文科学
- 感想投稿日 : 2012年5月21日
- 読了日 : 2011年1月2日
- 本棚登録日 : 2012年5月21日
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