超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書)

  • KADOKAWA (2020年1月10日発売)
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超書 21世紀の「新戦争論」 あらゆるものを組み合わせて、1つの目標を達成するように運用し、その全過程を管理する、それが、あたらしい戦争論である。

超限戦とは、軍事の領域を大きく超えた総合戦のことである
湾岸戦争以後の状況を冷静に分析し、現代に必要な闘いとは、孫子、クラウゼビッツによる、旧来の軍事論に加えて、マキャベリの「君主論」による軍事領域を凌駕した領域での戦いである。

■問題提起
・すべての境界と限度を超えた戦争、それが超限戦である
・あらゆるものが手段となり、あらゆるところに情報が伝わり、あらゆるところが戦場となる。
・すべての兵器と技術が組み合わされ、戦争と非戦争、軍事と非軍事というすべての境界が打ち破られる。
・一つの目標を達成するために動員できる力をすべて協力して投入する。
・戦争の過程すべてにおいて、絶えず情報を収集し、行動を調整し、情勢をコントロールする

■戦争の原則
・戦争の段階区分は簡素化でき、4段階のレベルに分ければ十分である。①大戦ー戦策、②戦争ー戦略、③戦役-戦芸、④戦闘ー戦術
・「彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず」「其の無備を攻め、其の不意に出ず」、「実を避けて虚を撃つ」などの原則はよく知られ、今日でも戦術家の行動の信条になっている。
・冷戦後、イデオロギーを同盟の基盤とする時代は終わり、利益のために同盟を結ぶやり方が主役になった

■ベトナム戦争の教訓
・ベトナム戦争後、アメリカ軍もアメリカ社会も、軍事行動での人員の死傷については病的なほど敏感になっている
・ステルス機、精確な弾薬、新型戦車、ヘリコプター、さらに超視覚攻撃、絨毯式爆撃が無制限に使用されるようになった
・すなわち、勝利しなければならないが死傷者を出してはならないという目標を同時に担うことになった。

■湾岸戦以後の近代戦
・米軍は、所有している先端技術に比べて、戦術は明らかに贈れているし、新戦術にチャンスを提供するために新技術を補足することにも長けていない
・軍事行動以外のすべての「非軍事の戦争行動」をプラスして初めて、完全な意味での全次元作成を実現することが可能となる。
・軍事革命とはすなわち軍事技術革命である。
・軍事思想の革命とは、つまるところ、作戦の様式と方法の革命である。
・盟主となったアメリカ軍は、「全面的優位性」、「海から陸へ」、「グローバルな関与」の3つを陸海空の3軍の新しい目標として確立、それにもとづいて、デジタル化装備、新型水陸両用攻撃艦、ステルス、遠距離爆撃機を選び新しい世代の兵器とした。
・先見の明のある国は、軍の簡素化の中で、人数の圧縮に主眼を置くのではなく、軍人の資質や兵器・装備におけるハイテクの割合の上昇、軍事思想や作戦理論の更新に力をいれるようになった。

■旧来の戦争の限界
・すべてが変化している。技術が爆発的に進歩し、兵器が更新され、安全観念が広がり、戦略目標が調整され戦場の限界が曖昧になり非軍事的手段と非軍事的要員が戦争に巻き込まれる範囲と規模が拡大する
・一つひとつの変化のためにそれと対応する戦法を求めるのではなく、すべての変化のために、共通の戦法を見つけ出すことが必要である。
・戦争はすべて兵器を動かすものだという時代がまだ過去の歴史となったわけではないが、観念としては明らかに時代遅れになり始めている。
・全体の戦いに勝つための、法則を探し当てることは問題研究の結果であると同時に、問題研究の始まりである。
・ますます多くの国が、政治、経済、国防、安全保障などに関わる重大な問題については、視線を軍事領域以外にも向け、他の手段を用いて補充し、ゆたかにし、ひいては軍事手段にとって変え、武力だけで達成できない目的を達成しようとしている。
・手段の複雑化がもたらしたものは、すべての軍人が思っていもみなかった、戦争の平民化である。
・孫子やクラウゼビッツでさえ、自分を軍事領域の檻の中に閉じ込め、マキャベリだけがその思想の空間いに迫っていた。長い期間にわたり、「君主論」とその作者は、その思想があまりにも時代の先を云っていたので、騎士や君子に歯牙にもかけられなかった。

■超限戦とは
・非軍事の戦争行動とは、軍事行動の包容の能力ははるかに上回るすべての活動領域にまで、拡大した。陸海空のみならず、情報戦、貿易戦、金融戦、生態戦、心理戦、密輸戦、メディア戦、麻薬戦、文化戦、国際法戦などである。
・戦争手段の増加が兵器の役割を縮小すると同時に、現代戦争の概念を拡大した。
・古い秩序がまさに消えていこうとする時代に、先にチャンスを手に入れる人は、往々にして、真っ先にルールを打ち破るか、あるいはこうした趨勢に最も早く適応する人たちだ。
・複数の作戦様式と組み合わせて、全く新しい戦法を作ることができる。意識的にせよ、無意識的にせよ、領域や類型を越えて、異なる作戦様式を集めて組み合わせる戦法は多くの国によって戦争の実戦の中で運用されている。
・勝利の法則を知ったからとて、必ずしも勝利を手中に収めるとは限らない。
・われわれが言う、現代的軍人と伝統的軍人との間に、すでに溝がある。溝を埋めるためには、徹底的な軍事思想の飛躍が必要である。それは、徹底的に軍事上のマキャベリになることだ。目的のために手段を選ばない。これはイタリアの政治思想家が残した最も重要な思想的遺産である。
・万物が相互依存している世界では限界は相対的な意味しか持たない。いわゆる超限とはすべての限界と称される
・360度の観察、設計とあらゆる関連要素の組み合わせを、「全方位度」という。「全方向度」は、超限戦思想の出発点である。

■結論
軍人と非軍人の境界がすでに破られ、戦争と非戦争の間の溝がほとんど埋められ、あらゆる難題がグローバル化の趨勢によって環節が互いにリンクし、かみ合うようになった以上、解決のカギを探すことが必要になる。
このカギは戦策、戦略、戦芸から戦術のすべてのレベルに至る規模に適応し、また政治家、将軍から兵士までの一人ひとりの手に合うものでなければならない。
「超限戦」のほかに、どんな適当なカギがあるのか、われわれには思いつかないのだ。

目次

序文
第Ⅰ部 新戦争論
 第1章 いつも先行するのは兵器革命
 第2章 戦争の顔がぼやけてしまった
 第3章 教典に背く教典
 第4章 アメリカ人は象のどこを触ったのか
第Ⅱ部 新戦法論
 第5章 戦争ギャンブルの新たな見方
 第6章 勝利の法則を見出す
 第7章 すべてはただ1つに帰する
 第8章 必要な原則
結び

ISBN:9784040822402
出版社:KADOKAWA
判型:新書
ページ数:328ページ
定価:1200円(本体)
発行年月日:2022年06月10日11版

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感想投稿日 : 2023年4月15日
本棚登録日 : 2022年11月26日

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