野村再生工場 ――叱り方、褒め方、教え方 (角川oneテーマ21 A 86)

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  • 角川グループパブリッシング (2008年8月10日発売)
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野村再生工場
叱り方、褒め方、教え方
著:野村 克也
角川Oneテーマ21 A-86

読んでいる最中に涙がでてきた

野村克也は弱者に寄り添い、かれらを見、そして成り行きを見守る。
野村野球とは、データだけにフォーカスした渇いた野球哲学では、決してない

テスト生としてプロ入りした野村氏が、苦労して頂点に登る
みずからを弱者と呼び、たどり着いた結論とはデータ野球である

たとえ、不器用な選手であっても、頭を使えば、一流のピッチャーにも充分に対抗できるということに気が付いた。

若い人間を育てるときには、「まずほめろ」といわれる
ところが、私はほめるのが大の苦手である
本心は、「叱ってこそ人は育つ」と私は考えているからだ。

「失敗」と書いて、「せいちょう」と読む
・人間は叱られて育つと信じている私であるが、それだけに叱る際には気を遣う
・ただやみくもに叱ってはいけない
・それでは逆効果になってします
・とくに若手選手と接しているときに大切なのは、絶対に結果論で叱らないことである
・それに全力を尽くした上での失敗から学ぶことは少なくない
・結果よりプロセスを重視するのが私の指導方針である

指導者は選手だけでなく、自分自身に対しても厳しくあらねばならない
・組織の伸長は、指揮官のレベルアップ如何にかかっている。
とすれば、リーダと呼ばれる人間は、つねに自分がレベルアップしていくことを目指す必要がある
・ほんとうにいまの指導方法でいいのか
・もっともよいやり方があるのではないかと自分自身につねに問いかけ、グラウンド以外でも自分を磨かなければならない
・より高みを目指して挑み続けなければならないのである

気になったのは以下です。

■弱者を強者にするために

「教えないコーチは名コーチ」
・なるべく教えるな
・なぜか、教えすぎると選手がみずから考えることをしなくなるからである
・目標を達成するために、足りないものは何か、何をしなければならないのか、を考え、課題に対して自ら真摯に向き合える者だけが、一流になれるのである

エースとしての自覚
・私の考えるエースの条件とは、
 ①チームが危機にあるときに救ってくれる存在であること
 ②チームの鏡であること
端的にいえば、この二点である

人間的成長なくして技術的成長なし というのが私の信念である
野球選手である前に、ひとりの人間であり、社会人なのだという自覚と認識を持たなければ、チームの鏡たりえない

人を見て法を説け
・人間の感じ方はそれぞれ違う
・同じことを言っても、それで大きく化ける選手もいれば、傷ついてしまう選手もある
・だからこそ、自信をつけさせるにあたっても指導者たる人間は、選手をよく観察し、それぞれに適切な指導を行わなければならない。

意識改革
・考え方が変われば行動が変わる

プロセス重視
・プロ野球は結果がすべて、つねに結果を求められるしそれで評価が決まる
・しかし、結果の裏側にあるものは何だろうか
・プロセスに他ならない、プロフェッショナルのプロ、とは、プロセスのプロでもある
・きちんとしたプロセスを踏むからこそよい結果にたどり着くができるし、結果を出すためには、どのないようなプロセスを歩むかということが重要になると信じている
・正しいプロセスを踏んでこそ、その組織はほんとうの意味で強い組織となるのであり、それが真理であることは、どんなに自由に気持ちよくプレーさせたとしても、あるいは、いくらいい素材を集めたとしても、一回は勝てたとしても、勝ち続けることはできないという事実が示している

・充分に準備をしたからといって、必ずしも成功するとはかぎらない
・だが、成功する確率ははるかに高くなる

・考えた末、出てきた結論は、「困ったときは原理原則に返る」

・強い組織をつくるために、徹底させなければならないのが、「フォア・ザ・チーム」、すなわち、チーム優先主義だ

・人間的成長なくして技術的進歩なし
 人間と言う字は、人の間と書く
 これは、人の間にあってこそ、人のためになってこそ人間と呼べる

■楽天的、意識改革

・チーム強化というものは、補強と育成の両面でなされなければならない

・「守り勝つ野球」 相手に点をやらなければ、絶対に負けない

・人間の価値は他人の評価で決まる。他人の評価が正しい

■再生の極意は気づきにある

・再生するためには、絶対に欠かせない素質がある
 ①闘争心
 ②感じる力、考える力、と言い換えてもいい
 鈍感は人間の最大の罪である

再生とは、よく観察し、気づかせること
・考え方を変えるために本人が気づくことができるにかかっている
・したがって、指導者は、気づかせてやること、が大切になる
・再生の極意があるとすれば、それはいかに、気づかせるか、ということに尽きるのではないかと私は思っている
・長年プロ野球で生きてきた私は、まだ可能性が残っているのに年齢や故障のために引退に追い込まれた選手や、指導者が長所に気づいてやれないために志半ばで野球界を去っていった選手を何人もみてきた。
・そして、そのたびに残念に思うと同時に、憤りを禁じ得なかった
・どうしてこの選手のよさに気づいてやれないのか、と。

■弱い組織を再生させる

・確固たる意志をもって、毅然とした態度で、「おれのいうとおりにしていれば必ず勝てる」と選手にいい続け、信じ込ませるができなければいけない、でなければ、チームはそこから崩壊していく

・見ている人は見ているよ
・仕事は絶対に手を抜いたらダメだ
・全知全能を使ってベストを尽くしなさい
・必ず誰かが見ているから

・私は弱いチームを強くことが好きなのだ
・生きがいといってもいい
・現役から監督時代を通じてずっと、強いチームに勝つためにどうすればいいのか、全身全霊を使って考え、準備し、実践してきた。
・そうしてきたからこそ、いまの私があるといっても過言ではない

■私の人生もまた再生の歴史である

・考えて考えて抜いたが、特効薬はみつからなかった
・ただ、ひとつだけわかったことがあった
・それは、「自分は不器用なのだ」ということだった

・出て来た結論は、「頭を使うこと」だった
・私は読みがはずれたらどうすることもできないが、狙い球が来た時は打てる
・では、より正確に読むために必要なものは何か
・いうまでもない、データである

目次
まえがき
第1章 弱者を強者にするために
第2章 楽天的、意識改革
第3章 再生の極意は気づきにあり
第4章 弱い組織を再生させる
第5章 私の人生もまた再生の歴史である
あとがき

ISBN:9784047101517
出版社:KADOKAWA
判型:新書
ページ数:192ページ
定価:705円(本体)
発売日:2008年08月10日

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 組織論
感想投稿日 : 2024年4月8日
本棚登録日 : 2024年4月6日

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