古事記の下巻は、仁徳天皇から推古天皇までの15代の物語です。
また、親子との、また兄弟のあらそい、男と女の物語がつづられています。
古事記での物語的な記述は、仁賢天皇までであり、武烈から、推古までの記載は、系譜記事のみとなっていて、重要なイベントへの指摘はなく、享年、陵墓の所在が欠けていたり、一貫性を失っている。
解説者は、古事記のもとになったのが、欽明天皇期にまとめられた「帝紀」や「旧辞」で、そのあとに補筆されたからだとか、継体朝以降を記載することについて何らかの思惑があったのではないかとの指摘がある。継体直前の帝は、武烈であり、日本書紀には、暴君といて描かれていて、以後の氏族の動向もことなっている。
推古天皇で終わっていることは初の女帝であることや、当時の仏教の受容や、聖徳太子らの活躍により興隆していた時代であることから、時代の一線を画したのではないかと述べられている。ちなみに、日本書紀は、第41代持統天皇までを記載している。天武天皇を補佐し天皇制を確立した。
人々の窮乏を知って、課役を3年間免除したという有名な話から、仁徳天皇の記載ははじまる。合わせて仁徳天皇は即位にあたって異母兄弟と皇位を譲り合ったエピソードがあって、”仁”たる儒教的な説話としても注目されるとの記載があります。
当時,諡号は、その天皇の業績に対して死後奉られるものであり、古事記33代の天皇の中で、仁を含めた帝は、垂仁天皇、仁徳天皇、仁賢天皇の3名のみである。
仁徳天皇は、その権勢に対して、恐妻家であってその妻であるイハノヒメとのやりとりが、歌のやりとりを通じて、多く語られているのが面白い。
履中天皇は、同母の弟に焼き討ちを受けて、危うく脱出されるエピソードが掲載されている。
軽太子と軽大郎女:允恭天皇の同母の妹との禁断の恋、異母での兄妹での婚姻は認めらえていたこと、タブーに触れて、天皇への支持を失ったことが記載されている。
雄略天皇が、結婚を約束した娘が80年たってから、訪ねてくるという挿話があって、たくさん品物を賜って帰したとのことが語られていて、歌のやりとりがなされている。
顕宗天皇は、父王の遺骸の発掘に関わった人々に対する処置を語った部分がある、遺骸を埋めた場所を記録して報告してきた老媼について、名を与えて厚く処した。また父を貶めた雄略天皇の墓を暴き陵を破壊しようといたが、実の兄である、のちの仁賢天皇がとどめ、陵の一部を掘るにとどめた。史記の伍子胥の平王の例をもって、その悪名をさけ、道理に従ったという意味で、”仁”であった。
本書には、巻末に解説と、系図が付されていて、古事記の構造と血脈を振り返る。
上巻:神話
① 高天原の神話群 天地創造からスサノウの追放まで
② 出雲神話群 スサノウの出雲への天下りから、大国主神の国譲りまで
③ 筑紫神話群 ニニギノ命ら3代の神々の婚姻神話
中巻・下巻:古史伝説
④ 神武天皇の英雄伝説
⑤ 沙本毘古の謀反と沙本毘売の悲劇
⑥ 倭建命の英雄伝説
⑦ 神功皇后の新羅征伐
⑧ 大山守命の非望
⑨ 仁徳天皇と皇后后妃の歌謡伝説
⑩ 軽太子と軽大郎女の兄妹間の悲恋
⑪ 雄略天皇の求婚伝説
解説者の感想:古事記全体を通じてみると、事件や場面が変化に富み、英雄の物語や愛の葛藤の物語などが交錯していて複雑な妙味が感じられる。表現も素朴純真であって、簡潔な叙述の中におおらかな精神といきいきといた生気のみなぎっているのが特長である。
上巻 神話の世界
中巻 神話と歴史をつなぐ橋
下巻 人の世、大和朝廷を舞台とする人間模様
各段の構成は、
原文書き下し文
現代語訳
注
解説
からなっています。
下巻の目次は次のとおりです。
凡例
古事記下巻
仁徳天皇
1 后妃と御子
2 聖帝の世
3 皇后の嫉妬と黒日売
4 皇后の嫉妬と八田若郎女
5 奴理能美と八田若郎女
6 速総別王と女鳥王
7 雁の卵の瑞祥
8 枯野といふ船
履中天皇
1 后妃と御子
2 墨江中王の反逆
3 水歯別命と曽婆訶理
反正天皇
允恭天皇
1 后妃と御子
2 即位と政治
3 軽太子と軽大郎女
安康天皇
1 大日下王と根臣
2 目弱王
3 市辺之忍歯王
雄略天皇
1 后妃と御子
2 若日下部王
3 赤猪子
4 吉野の童女
5 葛城の一言主大神
6 天語歌
清寧天皇
1 二皇子発見
2 袁祁命と志毘臣
顕宗天皇
1 置目の老媼
2 御陵の土
仁賢天皇
武烈天皇
継体天皇
安閑天皇
宣化天皇
欽明天皇
敏達天皇
用明天皇
崇峻天皇
推古天皇
- 感想投稿日 : 2022年10月30日
- 本棚登録日 : 2022年10月23日
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