文庫 自分の「異常性」に気づかない人たち: 病識と否認の心理 (草思社文庫 に 3-2)

著者 :
  • 草思社 (2018年12月5日発売)
3.66
  • (13)
  • (32)
  • (35)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 452
感想 : 30
5

自分の「異常性」に気づかない人たち
病識と否認の心理
著:西多 昌規
単行本版
草思社文庫 に 3 2

なんとも、やりきれない書でした。

正常か異常かの境界線 精神科医の見た景色
病識という語がテーマになっています。患者本人が自分が病気であることを自覚することが、病識。
「自分の異常性」を洞察する能力と語っています。

病名を告げることも、告げないことも難しい

医療のレベルは、ヤスパースが活躍していた時代に比べれば格段に進歩している。
特に、高度な治療にはインフォーム・コンセントが求められ、患者側にも病気について十分な理解をしてもらわないと、検査も治療もうまくいかない時代になっており、その傾向は今後もますます強くなっていくだろう。

精神の病気あるいは問題は、身体に生じる病気や問題と違って、とらえどころがないのが現状である。

■機械的な病名診断

21世紀の精神医学における病名の診断は、「操作的診断基準」によって行われるのが普通である

たとえば
 ①幻覚
 ②妄想
 ③思考の解体・疎通性のない会話(とんちんかんなこと)
 ④非常にまとまりのない言動・緊張病性の行動(意味不明な行動や急に固まってしまうこと)
 ⑤陰性症状(無感情、鈍感で、何事にも怠惰になってくる)
が、2項目以上あてはまり、それぞれの項目が1カ月間存在すれば、統合失調症と診断させる

病識がなければ、本人は「わたしは正常だ」とばかりに、医者のところには来なくなる。
治療が中断してしまい、病気がぶり返してしまう。

措置入院も、医療保護入院も、精神保健指定医による診断が必要である

はたして本人に病名を告げることが本当に正しいのか否か。

また、病識を認識していることで、長い老後を生き抜かなければならないことが本当に幸せなのか。

人生が長くなったことでこうした精神疾患が多くなっているのか、はたして、社会が複雑化して、産業医をふくめ、こうした患者がふえていくのか。

医師の苦悩と、精神医療の問題点をあらわにする。

ケース 近所の匂いと騒音が気になる、統合失調症の老婆
ケース うつ病のキャリア官僚
ケース あるエリートと双極性障害(そううつ)
ケース NPD:自己愛型パーソナリティ障害と心の痛みのない者たち
ケース 老人の暴力と、認知症
ケース 発達障害、アスペルガーの青年
ケース 境界性パーソナリティ障害による睡眠薬自殺

目次

はじめに 正常か異常かの境界線 
第1章 強すぎる被害妄想
第2章 自分の異常性に気づく機能「病識」とは何か
第3章 「不安に取りつかれた人」の病的な心理
第4章 「寝なくても平気」「俺すげぇ」 異様なハイテンションは病気か
第5章 なぜ人を傷つけても心の痛みが一切ないのか
第6章 威嚇と攻撃、見落とされた認知症
第7章 「悪気がない」という異常性
第8章 「死にたい」は狂言か、本気か
エピローグ 今後の課題
文庫版あとがき
参考文献

ISBN:9784794223654
出版社:草思社
判型:文庫
ページ数:240ページ
定価:750円(本体)
2018年12月10日第1刷
2020年04月09日第6刷

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 健康法
感想投稿日 : 2024年2月19日
本棚登録日 : 2024年2月2日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする