文庫 コールダー・ウォー: ドル覇権を崩壊させるプーチンの資源戦略 (草思社文庫 カ 2-1)

  • 草思社 (2022年8月3日発売)
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5

おもしろかった、いろいろなことが腑に落ちた一冊でした。

プーチンのロシアを軸として世界が描かれています。

結論からいうと、プーチン:ロシアの戦略とは、エネルギー支配をてことした、パワーシフトである。
世界の過半を握るエネルギーを手にしたプーチンは、新しく西側に新冷戦をしかけているというのが結論です。

気になったことは以下です。

・プーチンはロシアの英雄である。よっぱらいエリツィンからロシアを引き継いだプーチンは、チェチェンを勝ち抜き、汚職にまみれたエネルギー会社を国産化し、ロシアにふたたび富をもたらした。

・プーチンの政治モデルは、ピョトール大帝。強いロシアがプーチンの信条を支えてきた。

・第2次大戦の遠因は、石油である。日本と同様石油資源を持たなかったドイツは、ソ連がもつ、カザフスタン、キルギスなどにある石油と、ウクライナにある穀物を押さえるための戦いしかけた。

・同様、イギリスも石油をもっていなかったので、イランを押さえて石油の権益確保に動いた。

・中東の石油資源をおさえたのは、メジャー、いわゆる、セブンシスターズであった。

・中東戦争は、イスラエルに協力した国を、OPECが禁輸措置にしたきっかけとなった。

・ソビエトは、石油資源に恵まれていたにも関わらず、その設備を更新することを怠ったために、資金がなくなり、崩壊にいたった。

・ソビエトは、パイプラインをインド洋に伸ばそうとして介入したアフガニスタンで大敗を喫し、その崩壊をはやめた。もっとも、そのアフガニスタンを支援したアメリカもアルカイダを支援することになり、アフガニスタンは、「大国の墓場」とよばれた。

・ブーチンは、石油のみならず、天然ガスや、ウランをも資源として押さえて、エネルギーをロシアの戦略にまで打ち立てた。

・ウクライナの理屈は、もともと、ロシア系の住民から、支援要請があったこと。パイプラインの通すために、安価に天然ガスをおろしていたにもかかわらず、ウクライナが支払っていなかった。ロシアは平坦で、どこから責められてもおかしくない。そのために、緩衝地帯としての、衛星国を必要としていた。

大きく3部に分かれています

前段 プーチンの経歴と分析
中段 プーチンのエネルギー戦略
後段 中東戦略から、シェールオイル、そして、ペトロダラーの凋落へ


目次

第1章 失われた十年の終わり
第2章 新興財閥(オリガルヒ)との戦い
第3章 グレートゲームと新冷戦
第4章 スラブ戦士プーチンの登場
第5章 ウクライナ問題
第6章 プーチン分析
第7章 プーチンの石油戦略
第8章 天然ガス戦略
第9章 ウラン戦略
第10章 対中東戦略
第11章 黄昏のペトロダラーシステム
第12章 ペトロダラーシステム崩壊後の世界

日本語版のための最終章 エネルギー市場のデフレ傾向のなかで試されるプーチン戦略
参考文献
訳者あとがき
文庫版訳者あとがき

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年11月28日
本棚登録日 : 2022年11月26日

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