平重衡主体の河村漫画は総じて好ましく、この巻の「露分け」も良い。
大炊御門の女房・中納言の君こと源仲子と、駆け引きに手慣れた貴公子・重衡の、恋になりきらないコミカルで不器用な関係が愉快で可愛い。
仲子を思い遣るがために、傷つける言葉を与えて去る彼の哀しさと優しさ。
都落ちの夜に現れた、武者姿の美しさも一際眩しい。
史料の隙を突いた「緋の谷」では、平教経の生死を巡る文献の記述の混乱を、哀しい創作で埋めている。
著名な美女たちの恋心を新たに設定した例としては、「化ヶ原」での小督の秘めたる想い。
そして、源義経の生母・常磐の最初の恋、「真澄鏡」。
特に後者、彼女と平清盛の間に相愛関係を持たせると、二人に対する従来の印象が変わり、新鮮味も出る。
下って、元禄の世に名高い赤穂遺臣の仇討ちは、いわゆる忠義をキーワードに解説すると美談化され易いが、領民や商人の側から紐解いた「夢七夜」のように、見方を変えれば一概に判断はできないものと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2011年4月3日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年4月3日
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