山風明治短編選集、最終巻は、明治ものを手がける以前の、たまたま(?)明治を扱った短編を集めたもの。
しかしここで扱われている作品は、図らずも「時代の大きな事件の影で、その人生を破滅へと向かわせることになった人々の物語」が集められているように感じた。そのため、読んでて実にキツいものが多かった。
それにしても、表題作の登場人物、向畑治三郎の本当どうしようもない人生の変遷を描き、最後に「この無類に好人物の、哀れな、罪のない男の幸福な晩年を祈りたい。」と表する、作者の度量の深さに驚嘆する。それとともに、その思いを裏切るかのようなラストの"史実"にもまたどうしようもない人間のありかたを思い知らされた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代伝奇
- 感想投稿日 : 2013年9月3日
- 読了日 : 2013年9月3日
- 本棚登録日 : 2013年4月26日
みんなの感想をみる