堀一族の女たちVS.会津七本槍。壮絶な復讐劇、後編。
一気読み必至、練りに練られた物語構成の上手さには相変わらず舌を巻く。
香炉銀四郎と漆戸虹七郎だけが残ったラスト付近で、これまで決して自ら手出しをしなかった十兵衛本人がバトルに加わる。香炉銀四郎の死してなお術が解けない様子は見事。また、隻眼の剣豪・柳生十兵衛と、隻腕の剣鬼・漆戸虹七郎との戦いが見られるのも嬉しいところ。
十兵衛や女たちの活躍はもちろんのこと、解説でも触れられていたが、僧侶たちの戦いが実に印象的だ。沢庵とその弟子の僧侶たちが戦闘に加わり、刃を取らずして相手をやりこめる。そこには僧侶たち自身の死がつきまとうのだが、彼らに悲壮感は全くなく、ただ使命のために命を捨ててゆく。しかも、この戦法が史実を元にしているというから驚く。
エンタメとして申し分なく面白いのだが、かつ、自分の使命に生きること、命を賭すということについて大変考えさせられる物語である。
これも解説で指摘されていたことだが、荒唐無稽なフィクションに思えるこの話の基本は史実に沿っているというのもすごい。加藤明成が、反明成派の堀主水らを殺害したことや、それを幕府に咎められて改易させられ、石見国に下ったことは事実。ただし、明成に子がいなかったというのは創作で、実際には長男が加藤家を継いだらしいが。――と、これらは日本史があまり得意でなかった私が今、wikipediaを見て得た情報なのだが(笑)、名前すら知らなかった加藤明成という人物について、これでしっかり記憶してしまったではないか。山田風太郎を中学生の頃に読んでいれば、日本史が好きになったかもしれないと思うと後悔。
- 感想投稿日 : 2013年6月14日
- 読了日 : 2013年6月14日
- 本棚登録日 : 2013年6月14日
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