この映画を劇場で初めて観たときは「息子を亡くした母親のために、1人残った息子をアメリカの精鋭部隊が救出する」というエンターテイメント性あふれるストーリーに興奮しつつも、こんな安っぽい美談で戦争を正当化されたらたまんないなと思ったものです。
今回久々に見返してみて、ちょっと見方が浅かったかなとも思いました。印象に残るのは「たった1人の命を救うために何で自分たちが危険を冒さないといけないのか」と公然と不平をこぼす兵士に対し、主人公が「戦争で理不尽じゃない命令があるか」と答えるシーン。そう、スピルバーグはこの作戦を「理不尽」と言い切っているのです。「3人の息子を亡くした母親のために」なんて美談めいた大義名分は、戦争という大きな理不尽さの前では完全に無効で、兵士たちの命は容赦なく奪われていくのです。この映画はアメリカのプロパガンダなんかではなく、戦争の理不尽さを描いたものなんですね。
戦闘シーンのにリアルな描写、みごとに描き分けられる人間味あふれる兵士たち、挿入される印象的なエピソードなど、ほかにも語るべきことは沢山ある映画ですが、「エンターテイメント映画の枠組みの中で伝えるべきメッセージを伝える」という難しい作業を成し遂げた点を讃えたいです。傑作!
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
◆映画:アクション・アドベンチャー
- 感想投稿日 : 2013年7月24日
- 読了日 : 2013年7月20日
- 本棚登録日 : 2011年12月11日
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