なんとも、透明感のあるSF小説短編集。すごく好きだなと思う。火星に行くロケットがまるで電車を待っているかのようにあったり、テレパシーをつかえる人がパソコンを使える人みたいにいたりする。作者は電車のホームとかで考えたんだろうなあと想像が膨らむ。当時SFの舞台として考えられていた未来が今というのも面白い。今のSFって暗くイメージがあるけど、この作品のテイストは未知のものに対する期待と不安が入り混じっている。ちょっとした気分転換になる、手軽に読める短編を探している40代以上の男性におすすめ。
短いので数ページというのもある。X電車は良かった、電車に対する憧憬、電車を見たときに心がワクワクすること、子供時代を思い出すこと、どこかに連れていってくれること、そんなものが主人公から感じられた。それでも黒こげの死体がどんどん出てくるところなど、テンポよい、小気味良いほどの残忍な展開がスパイスになる。痛みをともなうけどもそのあっさりとした書き方に思わず読めてしまう、SF立ったことを思い出す。ミステリーではない。不条理なのだ。そして現実とは不条理なものなのだ。だからこそ、読めてしまうのかもしれない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
6 SF
- 感想投稿日 : 2019年4月1日
- 読了日 : 2019年3月31日
- 本棚登録日 : 2019年3月28日
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