失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社 (2012年7月12日発売)
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感想 : 44
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# 失脚/巫女の死

深みのあるフィクションであり、楽しむためには知性が必要だが、自分がまだそこに追いついていない。
普遍的な内容を短い物語に落とし込んでいるところがいいと思う。

## トンネル
カフカ的不条理。若者の、太ってて体の穴を塞いでいるという特徴は何か意味があるのか?

## 失脚
ソ連らしき共産主義国の最高会議を舞台にした作品。
ただ日時を間違えて参加しなかったOについて逮捕されただの暗殺されただの、全員で疑心暗鬼になることによって結果的にAが失脚する。
N視点で語られており、Aの失脚後、Nは意図せず順位を上げることになる。だからといって安心できるのではなく余計に粛清の不安に陥ることになる。

A
B:外務大臣。「宦官」「友人B」「われらが天才」
C:国家公安大臣。秘密警察。ゲイ。「国務おばさん」
D:党書記長。Mの愛人。「いのしし」
E:通商大臣。Dの取り巻き。「エヴァーグリーン卿。、
F:重工業大臣。「靴磨き」「ケツなめ」
G:指導的イデオローグ。「紅茶の聖人」
H:国防大臣。「ジン・ギス・汗」
I:農業大臣。法学者。「われらがバレリーナ」
K:大統領。「ジン・ギス・汗」
L:運輸大臣。最長老。「記念碑」
M:教育大臣。「党のミューズ」
N:郵政大臣
O:核開発大臣
P:青少年団長。Aの娘と関係。

## 故障
第一部は随筆のようなもので文学論が語られる。現代の小説家にとって残された可能な物語は因果関係にもとづいて結果にたどり着くものではなく、何か故障やアクシデントによって発生する物語である。
第二部は物語で、文字通り車の故障で一晩の宿を借りることになった家で、模擬裁判のような遊びが行われ、主人公は死刑判決を言い渡され、自殺する。

## 巫女の死
名前が覚えにくくプロットが複雑なので理解しにくい。
オイディプスの悲劇が、予言者や巫女が託宣した通りではなく、さまざまな偶然によって引き起こされたということを推理小説仕立てで書いている。
神や貴族が人間味があってばかばかしいところが面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年4月20日
読了日 : 2018年5月18日
本棚登録日 : 2018年4月20日

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