差別はたいてい悪意のない人がする

  • 大月書店 (2021年8月26日発売)
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3部に分かれていて、1部は『善良な差別主義者の誕生』

差別構造が組み込まれている社会で、私たちは『差別を内在化して』『差別を再生産して』いるという話。
差別は見えにくい。
理由はいくつもあるけれども、『自分の立ち位置』しか自分で経験して知る事が出来ないからと言う理由が大きい。
マイノリティと言われる人たちでさえ、立ち位置が変わるとマジョリティになり他のマイノリティを排除する。
女性と言うマイノリティが自国民と言うマジョリティになり、難民と言うマイノリティを排除する例が出ていた。立ち位置が変わるという事がどんなものなのかが分かる。

p65『差別は私たちが思うよりも平凡で日常的なものである。(略)誰かを差別しない可能性なんて実はほとんど存在しない』

差別だと言われて傷つく必要はない。ただそれを『間違った行動』だと認め、『正しい行動と認識』に変えていく努力をするだけ。
努力なしには平等な社会は訪れない。待っていても何も変わらない。という章だった。



2部『差別はどうやって不可視化されるのか』
4章『冗談を笑って済ませるべきではない理由』この章が一番読みごたえがあった。

「誰がそれに対して笑うのか」「なぜ笑えるのか」を考えると、それは笑えなくなる。冗談は他人への侮辱で笑いを取っている。その集団を侮辱していいと何度も繰り返し伝える事で、社会はそれを容認する。
それに対抗するには、笑わない事でそれは笑えないのだと伝えるしかない。と言う話だった。



笑えないものを笑わないのは、単に私が嫌な奴だからなのか?とか、冗談を冗談で笑わなければいけないのかと思っていたけど、この章は『笑うな』と書いてあってよかった。その理由もわかり易い。

笑えない冗談には笑わない。そんな単純な事さえ、差別社会では分からなくなる。

その後の章は、同性愛の弾圧の話なども入っている。キリスト教では同性愛弾圧が激しいというものを見かけていたけれども、韓国もそうだったのは初めて知った。



3部『私たちは差別にどう向き合うか』

p182『マジョリティは、マイノリティの話に耳を傾けないまま、彼らに丁寧に話す事を要求する』
これもツイッターでよく見かけた。そして、丁寧に話せば耳を傾けるかと言えば傾けない。声は小さく目立たないので『知らない』とそっぽを向く事が出来るのがマジョリティだ。



9章で『みんなのための平等』にみんなのトイレ論争についても書かれていた。
これについてはずっと考えていて、どう考えればいいのか分からないと思っている。
女性側は男性と一緒のトイレなんて使えないと言い、男か女かの二分法で困ってる人たちは性別で分けられたトイレは使えない。
『オールジェンダー・レストルーム』という皆のトイレがある国もあると紹介されている。安心安全なトイレ問題。盗撮する人やわいせつ目的の人が入って来た時点で、通報システムなどがあればいいのになと思います。が、そのようなシステムもプライバシーの問題でトイレでは難しそう。それでも、考え続けなければいけない問題だと書いてある。



p202『「差別されないための努力」から「差別しないための努力」に変えるのだ』

全てはそれに尽きる気がする。そして、無意識で差別をしている人にそれを訴えても、全く響かない事も知っておく。
自分の利益が奪われる変化を望まない人たちには、無理なのだ。

世界は分断されている。だから、差別の構造は今まで残り続けてきたのだから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会問題
感想投稿日 : 2023年12月15日
読了日 : 2022年4月21日
本棚登録日 : 2023年12月15日

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