メリットの法則 行動分析学・実践編 (集英社新書)

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  • 集英社 (2012年11月16日発売)
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4

本書は,行動分析学を分かりやすくまとめた新書である。

1 日常に関連するエピソードを交え,基本的な行動分析学に触れられるようにしている。

 問題行動,不登校,ダイエットなどのエピソードから「直前」「行動」「直後」の3つの観点で捉えること,行動の機能に着目することなど分かりやすく解説してくれている。
 行動を分析するために,「死人テスト」,「具体性テスト」を紹介している。



2 初心者向けでありながら専門的な内容にも踏み込んでいる。

 この本で初めて分かったことが,「阻止の随伴性」である。「阻止の随伴性」については,著者によればこれについてはあまり解説されておらず,積極的な点のみしか取り上げられていなかったという。


阻止の随伴性は,①われわれが注意をし続けてそれを止められない,②われわれの運動機能を儀式的に維持する,③強迫行為に従事する行動を促進する,などの特徴も持っている。 ー 111ページ




行動分析はどこか冷たい印象を持っていた。
だから自分の中では受け入れられない所もあったというのが,少し変わりました。
全部が全部行動分析で解決するわけではないけれども,行動分析の視点も自分の中で使えるようになると捉え方の幅が広がるのかなとも思いました。


初学者にとっても,専門者にとっても行動分析を深めるための良書になると思います。



以下,スペース96より引用
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目次:
まえがき
第1章 その行動をするのはなぜ?
1.実用的な心理学
2.奇声をあげるアキラくん
奇声をあげたら、お母さんと離れ離れに/通常学級に入学したアキラくん/陥りがちな「循環論」の罠/原因を「行動随伴性」で考える
3.身近な例で考える行動分析学
すぐに弱音を吐くタカシさん/「甘えているから」では、問題は解決しない

第2章 行動に影響を与えるメカニズム(基本形)
1.原因と結果を「真逆」に考える
「症状」と「行動」は異なる
2.行動とは何か?
「試験勉強」「破壊行為」は具体的でない/行動の前に原因がある「レスポンデント行動」
3.行動を強める「強化」の原理(基本形)
「好子」出現の強化/「嫌子」消失の強化
4.行動を弱める弱化の原理(基本形)
嫌子出現の弱化/好子消失の弱化
5.四つの行動原理で、あらゆる行動を説明する

第3章 行動がエスカレートしたり、叱られても直らないのはなぜ?
1.行動の直後に何が起こったのか注目せよ
2.なぜダイエットが難しいのか
3.行動が消えてしまうメカニズム(消去の原理)
恋に敗れて、行動が消去される
4.とても大切な消去の原理
5.社会生活に重大な変化を及ぼす「強化スケジュール」
6.強すぎる消去抵抗、消去バースト
消去の連続に耐える
7.叱られても止められないのはなぜ?(回復の原理)
失敗はこうして繰り返す
8.「アメとムチ」という発想を捨てよう
「ムチ」の副作用

第4章 行動に影響を与えるメカニズム(応用形)
1.日常の行動はもっと複雑
人間の行動をより深く理解するために
2.行動を強める強化の原理(応用形)
嫌子出現「阻止」の強化/嫌な思いをしないために/好子消失「阻止」の強化/持ち物が増えると悩みが増える
3.行動を弱める弱化の原理(応用形)
嫌子消失「阻止」の弱化/好子出現「阻止」の弱化/「じっとしている」は死人にもできる
4.阻止の随伴性に伴うリスク
5.強迫性障害を形成するメカニズム
不安を引き起こす刺激を与え続ける/刺激を自動的にシャットアウトする
6.阻止の強化による強迫性障害
7.エクスポージャーを行動分析学でとらえ直す
不安を減らそうとしてはいけない

第5章 行動は見た目よりも機能が大事
1.行動の機能は四つしかない
物や活動が得られる/注目が得られる/逃避・回避できる/感覚が得られる
2.同じ行動のように見えるが同じ行動ではない、という落とし穴
機能の重複
3.家庭での問題から(不登校の連鎖、そして回復へ)
3兄弟の不登校/不登校を支える行動随伴性/学校に行かない兄は「かわいそう」/“心の中身"は不毛な議論
4.ウソを簡単に見抜く方法
(1)学校を休むと家で遊べる(物や活動)
(2)母親と一緒にいられる(注目)
(3)学校に嫌なことがある(逃避・回避)
(4)機能が複合している場合、シフトしていく場合
5.てんびんの法則
家庭で過ごす理由/おのずと学校に行く確率を高める方法
6.奇声をあげる男の子
7.嘔吐を繰り返す女の子
8.リストカットがやめられない女子学生

第6章 日常にありふれた行動も
1.トークンエコノミー法
トークンエコノミー法とは何か/お店がポイントカードを作る理由/視覚的な達成感/トークンエコノミー法は「さじ加減」が決め手/
手応えのある仕事/トークンエコノミー法のバリエーション/不登校と「そもそも」論/「ワクワク感」を大事にしよう/ポイントを減点するレスポンスコスト
2.FTスケジュール
ニューヨークでのこと/「わんこそば」方式/強度行動障害者の施設において/その日のうちに現れる明確な効果/迷信行動/
迷信行動とエクスポージャー
3.“任意の努力"を目指して
「したからやる」行動随伴性を

あとがき
参考文献
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育実践
感想投稿日 : 2013年1月4日
読了日 : 2013年1月4日
本棚登録日 : 2012年12月15日

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