おじいちゃんのまち

  • 講談社 (1989年11月1日発売)
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本棚登録 : 24
感想 : 4
5

野村たかあきさんの版画絵本の5冊目。
にっぽん絵本賞受賞作でもあり、中央児童福祉審議会の特別推薦や、「よい絵本」にも認定されている作品。もちろんそれが読んだ理由ではなく、野村さんの作品をもっと知りたかったから。
そしてこの本も、「ああ、いいなぁ・・」としみじみとした読後感に浸っている。
お話は、ひとりで暮らすおじいちゃんを訪ねて行った少年の視点で語られる。

おばあちゃんが亡くなってから、隣町でひとりで暮らすおじいちゃん。
どうして自分たちと一緒に暮らさないのかと不思議に思っていたが、おじいちゃんと銭湯に行って、町の人々と触れ合ううちに、だんだん理解するようになる・・

昭和の雰囲気たっぷりの版画絵。
箪笥の上にこけし(!)しつらえた神棚にお札と達磨(!)チャンネル式のテレビ(!)
写真屋さん、魚屋さん、八百屋さん、お風呂屋さん、畳屋さん。
商店街の看板や瓦屋根。それはそれは手が込んだ版画絵のどの一枚も、見逃せない貴重な風景。
銭湯の名前は「弥生湯」さんだが、野村さんのお友だちのご実家が同名のお風呂屋さんだそうで、この絵本のために取材させていただいたそうだ。
これまでお世話になった人たちへのお礼の意味も込めて、細かな部分で実名で登場している方もかなりいるようで、それがこの作品のリアリティを生んでいるのかもしれない。

僕がおじいちゃんを好きなように、おじいちゃんも町の人たちが好きで、町の人たちもおじいちゃんが好きなんだ。
たったこれだけの、でもとても大切なことが分かった少年の心の優しさに、思わず胸があったかくなる。
地域社会との関わりがどんどん薄くなる昨今。
無意味な全能感にあふれた人ばかりが増えた。
こんな話はファンタジーだと、子どもたちは言うかもしれない。でも、出来るはずだと信じたい。
踏み込み過ぎずに思いやりあう優しさを、もう一度心に呼び覚ましたい。
だからこそ、英語圏の本でもないのに英訳され、更に韓国語版まで出たのだと思う。
心の扉を、そっと優しくノックされるような、そんなお話。
約13分。高学年以上に。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本・通年
感想投稿日 : 2018年6月25日
読了日 : 2018年6月23日
本棚登録日 : 2018年6月25日

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