日本橋にあった魚市場と、京橋にあった青果市場とがそれぞれ引っ越してきて1935年(昭和10年2月)に開場したのが、今の築地市場。
以来80年に渡って日本の食文化を支えてきた世界最大規模のその市場も、2016年11月には江東区の豊洲に移転することが決定している。
作家モリナガヨウさんが、築地市場への感謝を込めて徹底取材したのがこの一冊。
約一年間かけて足しげく通いつめただけあって、イラストの丁寧さにはひれ伏してしまうほど。
いくつもの俯瞰した図では、市場の騒めきと活気までが伝わってくるようだ。
有名なマグロの解体とセリの部分は描いているが、ポイントは魚よりも、どちらかと言うと市場で働く人たちとその作業の流れに当てている。
その圧倒的な荷の量と働く人の数、作業の煩雑さとそれぞれに使用される道具類、運搬車の色々、はては使用後の膨大な発泡スチロールの山が処理されるところ。
更に、昼頃には綺麗に清掃がなされて嘘のような静けさになるという仲卸売り場の様子まで追っている。
美味しいお寿司を口にするまでには、こんなにも多くの人の手がかかっているものなのだなと、当たり前のことを知らされることになる。
最初のページに登場する上から見た市場の図では、全体がゆるやかなカーブをえがいているのが分かるが、かつては貨物列車で運搬していた名残なのだそうだ。
知らないことって、山のようにあるものだ。
大人が見てもじゅうぶんに楽しめる、築地市場の「いま」がここにある。
第63回産経児童出版文化賞の、大賞受賞作品。
- 感想投稿日 : 2016年7月8日
- 読了日 : 2016年7月8日
- 本棚登録日 : 2016年7月8日
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