本のリストの本

  • 創元社 (2020年8月27日発売)
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本棚登録 : 492
感想 : 30
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本を愛してやまない5人の著者が「本のリスト」をめぐってそれぞれに文章を寄せたエッセイ集。
リストのラインナップを早く知りたいという方は、巻末の水色のページ「全リスト」からどうぞ。
いえ、それよりもゆっくり逍遙したいという方は最初からどうぞ。
凝った構成を楽しみながら読むも良し。
パラパラと好きなところをめくって読むも良し。
「本の虫の本」の兄弟分である本書。
熱量はだいぶ抑え気味だが、大人の鑑賞に堪えるより美しい一冊となっている。

表紙にズラリと並ぶ横書きの文字。これが全リストだ。
量に圧倒されそうだが怯むことはない。
見返しには著者5人の紹介。いやもう、これもまた圧倒される。
でもまだ負けるわけにはいかない・笑
目次をじっくり眺め、「私を作った十冊の本たち」をまず読む。
自分だったら自己紹介代わりの十冊を何にしようかなどと考えながら。
本書を読んだ後、何故かここに帰りたくなるから覚えておいてね。

中表紙のあといよいよ本文。
ナンバーをふった扉は黒のバックに白文字。
この部屋に誘う縦書きの文章が殊に巧い。
黒の扉は全部で8つ。それぞれの部屋に更に細かいリストを抱えている。
各項目の末尾にはリストの出典が記され、出典がない場合は書誌情報が小さく載っているという親切さ。大船に乗ったつもりで本の旅に出られる。

画家が収集した本のリスト、雑誌に掲載されたお勧め絵本のリスト、古書目録に掲載された架空の探究書とか、戦没学生の手記に残された書名や、受刑者が刑務所で読んだ本のリストとか。「出版年鑑」の兄弟分のリストもある。これを編纂したひとがいたんだ。。。
現実に存在するリストだけでなく、刊行しなかった本のリストもある。
発想のなんという豊かさだろう。
大型の書店や図書館を、特に目的を持たずに眺めて歩くぜいたくな時間のようだ。

ランボーがアフリカで母親にせがんだ本のリストがある。
買って送ってくれるようにと、何度も何度も手紙で書いたらしいが、建築や土木などの実用書ばかりだ。詩人はエチオピアでどんな夢を見ていたのだろう。
ロンドンの「チャリング・クロス街84番地」の本屋に、ニューヨークに住む女性が手紙で本の注文をする。そのリストもある。届くまで何か月も、時に何年もかかったりする。
念願の本が届いたときが喜びがどれほどのものか、ぜひ想像してみて。
「版で書体が違う本のリスト」には、三冊の「君たちはどう生きるか」が登場する。書体の選択には、どんな秘密があったのか。
日中戦争がはじまった頃の経済統制によって、国に価格を決められた古本のリストもある。
5人の著者の中には古書のオーソリティもいるのだ。
しみじみと心洗われるようなエッセイを書く絵本の専門家も。

新しい本にばかり気を取られていないで、今一度周りにある本に目を向けてみよう。
世界中には、一生かかっても読み切れないほどの本があって、いつでもあなたを待っているのだ。
本のリストの本は、そうささやいている。皆様、どうぞお読みあれ。これは楽しいですよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本にまつわる本
感想投稿日 : 2020年9月2日
読了日 : 2020年9月2日
本棚登録日 : 2020年9月2日

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コメント 2件

まことさんのコメント
2020/10/10

nejidonさん。こんにちは!

久しぶりに、nejidonさんと同じ本をブクログの本棚に載せました。
nejidonさんは、発売後すぐにレビューされたのですね(*^^*)

私は、最近現代小説を読むことが一番多いですが、nejidonさんのレビューにあるような『チャリング・クロス街84番地』のようなちょっとだけ昔の、ああいいった本をゆっくり読みたいな~と思いつつも、なかなか読めません。(途中まで読んで未読です)
私には、レビューも難しそうな本ですが、いつかちゃんと読みたいと思っています。

nejidonさんのコメント
2020/10/10

まことさん、こんばんは(^^♪
コメントありがとうございます!
この本を読まれたようで、「おめでとうございます!」(*'▽')
本書の前に「本の虫の本」を読了していましたので、その兄弟分を早く見たかったのですよね。
ソフトカバーのブルーが美しくて、とても素敵な装幀だと思います。
他にも読んでみたい本がおありなのですか?
でもでも、急ぐことは全然ありませんよ。本は待っていますから・(笑)
レビューはあまり考えないことです。読んでいるとき楽しいのが一番。
無理してまですることではありません。ワタクシ、そういうのいっぱいあります。
ではでは、また楽しい読書タイムをお過ごしください♪

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