本を愛してやまない5人の著者が「本のリスト」をめぐってそれぞれに文章を寄せたエッセイ集。
リストのラインナップを早く知りたいという方は、巻末の水色のページ「全リスト」からどうぞ。
いえ、それよりもゆっくり逍遙したいという方は最初からどうぞ。
凝った構成を楽しみながら読むも良し。
パラパラと好きなところをめくって読むも良し。
「本の虫の本」の兄弟分である本書。
熱量はだいぶ抑え気味だが、大人の鑑賞に堪えるより美しい一冊となっている。
表紙にズラリと並ぶ横書きの文字。これが全リストだ。
量に圧倒されそうだが怯むことはない。
見返しには著者5人の紹介。いやもう、これもまた圧倒される。
でもまだ負けるわけにはいかない・笑
目次をじっくり眺め、「私を作った十冊の本たち」をまず読む。
自分だったら自己紹介代わりの十冊を何にしようかなどと考えながら。
本書を読んだ後、何故かここに帰りたくなるから覚えておいてね。
中表紙のあといよいよ本文。
ナンバーをふった扉は黒のバックに白文字。
この部屋に誘う縦書きの文章が殊に巧い。
黒の扉は全部で8つ。それぞれの部屋に更に細かいリストを抱えている。
各項目の末尾にはリストの出典が記され、出典がない場合は書誌情報が小さく載っているという親切さ。大船に乗ったつもりで本の旅に出られる。
画家が収集した本のリスト、雑誌に掲載されたお勧め絵本のリスト、古書目録に掲載された架空の探究書とか、戦没学生の手記に残された書名や、受刑者が刑務所で読んだ本のリストとか。「出版年鑑」の兄弟分のリストもある。これを編纂したひとがいたんだ。。。
現実に存在するリストだけでなく、刊行しなかった本のリストもある。
発想のなんという豊かさだろう。
大型の書店や図書館を、特に目的を持たずに眺めて歩くぜいたくな時間のようだ。
ランボーがアフリカで母親にせがんだ本のリストがある。
買って送ってくれるようにと、何度も何度も手紙で書いたらしいが、建築や土木などの実用書ばかりだ。詩人はエチオピアでどんな夢を見ていたのだろう。
ロンドンの「チャリング・クロス街84番地」の本屋に、ニューヨークに住む女性が手紙で本の注文をする。そのリストもある。届くまで何か月も、時に何年もかかったりする。
念願の本が届いたときが喜びがどれほどのものか、ぜひ想像してみて。
「版で書体が違う本のリスト」には、三冊の「君たちはどう生きるか」が登場する。書体の選択には、どんな秘密があったのか。
日中戦争がはじまった頃の経済統制によって、国に価格を決められた古本のリストもある。
5人の著者の中には古書のオーソリティもいるのだ。
しみじみと心洗われるようなエッセイを書く絵本の専門家も。
新しい本にばかり気を取られていないで、今一度周りにある本に目を向けてみよう。
世界中には、一生かかっても読み切れないほどの本があって、いつでもあなたを待っているのだ。
本のリストの本は、そうささやいている。皆様、どうぞお読みあれ。これは楽しいですよ。
- 感想投稿日 : 2020年9月2日
- 読了日 : 2020年9月2日
- 本棚登録日 : 2020年9月2日
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