読みながら、本屋さんに行く楽しみがじわじわと思い出されてきた。
図書館の敷居が非常に高くて、司書さんに話しかけるのも出来なかった子供の頃。
本屋さんの棚に並ぶ様々な背表紙の、なんと眩しかったこと。
地元・神戸の海文堂書店が閉店したことをきっかけに、「町には本屋さんが必要です会議」が開かれることになる。これは、その記録と考察。
2014年の一年間に、実に全国各地で16回もの「町本会」を開いている。
夏葉社の島田さん、ライターの空犬さん、往来堂書店の店長・笈入さんの3人が発起人だ。
たくさんの本屋さんや書店員さんのインタビュー記事と、町の本屋さんの歴史にも触れている。
地方都市で、様々に工夫を凝らしながら本屋さんの存続に力を注ぐ人びとの話も。
なぜ本屋さんの危機的な状況は続くのか。そもそも本屋さんの魅力とは何か。
あえて答えは出していないし、これという打開策もない。
読み手もともに考えるのが、この本の目指すものだ。
お客さんに対して店に来ることのメリットをどう伝えるか。
どの本屋さんもそこに知恵を絞っている。
これは、もうかなり前から言い尽くされている感がある。
それでも危機的状況と言われるのは、もしや読者である私たちが意識を変換しなければいけないのではないか。ネットで検索して頼めば、家にいながらにして欲しい本が入手できる。より早く、より安価に。
だが、その浮いたはずの時間で、私は何を出来たというのだろう。
求める本に出会うまでの楽しみを失って、その分私は何を得ただろう。
本当は、欲しい本を手に入れるためには手間暇を惜しんではいけないものなのだ。
その手間暇が、実は私を育てていたのではないか。
どれほど人口が減ってデジタル化が進んでも、町の本屋さんへのノスタルジーが消えないというのが、その何よりの証拠のように思える。
現実には、先ず図書館で借りて読む。手元に置いておきたいと思えば、本屋さんで頼む、という段階を踏んでいる。既読なのだから、急いで入手する必要もない。
ネットで検索するのは、どうしても図書館に無い本だけにしている。
そしてたまに出向く本屋さんの棚を眺めるのを、こよなく楽しみにしている。
文具を買ったり、想定外の本を購入して帰る時もある。
スマホで読むのは青空文庫。
たぶん、私のようなスタイルが多いように思うが、ブク友さんたちはどうだろう。
一番最後に、広島のウィー東城店で出会ったという中学生の女の子の文章が載っている。
図書委員の活動で学んだことを書いたその原稿が、とてもとても良い。
利用者もなく、埃をかぶったボロボロの本だらけの学校図書館。
それを、本好きなひとりの中学生が周りを巻き込みながら変えていく。
「人生は短いから」「やりたいことは全部やってから死ぬ」というこの中学生は、三年間図書に関わったことを感謝し、「悔いはない」と言いきる。
この気持ちを忘れているのは、きっと大人の私たちの方なのだ。
- 感想投稿日 : 2020年2月8日
- 読了日 : 2020年2月7日
- 本棚登録日 : 2020年2月8日
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