期待通り面白かった!「中古典」とは著者の造語だそうだが、これは言い得て妙、さすがの目の付け所だ。確かに明治大正から昭和の戦前あたりの文学って、すでに古典と言っていいだろうし、その後の60年代から80年代くらいに書かれたもののなかに、同じように今後読み継がれていく作品があるはずだ。発売当時よく読まれた48作品が取り上げられ、本としての価値(名作度)と面白さ(使える度)が三つ星で評価されている。忖度なしでバッサリいくところが著者の真骨頂。好きだなあ。
斎藤美奈子さんとは年が近いせいか、そうそう読んだわそれ懐かし~という作品が多く、数えてみたら28タイトルが既読だった(たぶん)。ずっと大事に本棚に並べているものもあり、聞いたこともないよというのはほとんどなかった。そりゃあ楽しく読めるはずだわね。名作であり、かつ今読んで面白いと三つ星が並んだものは10作足らず。星一つずつというのもあったりするが、おおむね納得の評価であった。
読みどころはもちろん、それぞれについての評なのだけれど、最初の「はじめに」がたいそう興味深かった。「予習をかねて軽く紹介しておきたい」と本書で取り上げた作品以外にも触れながら、各年代の特色を俯瞰する内容になっている。短い文章だが、「時代の波をかぶる青春小説」「プレフェミニズム期の証言としての女性エッセイ」「懲りずに湧いてくる日本人論」などなど、なるほどねえとうなずくことしきり。これってまだ連載中なんだろうか。もっと読ませてほしいなあ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文芸評論
- 感想投稿日 : 2020年10月28日
- 読了日 : 2020年10月22日
- 本棚登録日 : 2020年10月22日
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