人の視覚はイメージや言葉に規定される。
だが、中平氏はシャッターを切るとき、イメージや言葉を斥け、事物そのものを見る。あらゆる情緒や詩性を排し、まるで図鑑に載っている事物のように写真を撮る。中平氏はこう言う。事物が事物であること。それをはっきりさせることだけで成立するものが写真ではないのか、と。
この映像評論集は、67~73年に書かれた論考だ。今読んでも新鮮さがある。
ここで提起された問題や表現についての考えは、これからのメディア社会においても役立つと思う。同時に、この論文集は中平氏がどこまでも眼の怠惰を戒め、事物そのものを見ようと試みた闘いの記録でもある。
ただ、文体や使う言葉が古くて読み難い箇所がある。
できれば、中平氏の写真集を見てからこの本を読んでほしい。とくに最近の。
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カテゴリ:
芸術文化
- 感想投稿日 : 2012年8月10日
- 本棚登録日 : 2007年12月17日
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