鉄は魔法つかい: 命と地球をはぐくむ「鉄」物語

著者 :
  • 小学館 (2011年6月1日発売)
4.31
  • (18)
  • (16)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 196
感想 : 26
3

毎週日曜日に読売新聞の文化面に掲載される「本よみうり堂」の書評を楽しみにしている。書評を担当する読書委員の一人の肩書きが「カキ養殖業」になっているのを見て、いろんな人に書評を依頼するものだと感心していた。その読売新聞の2012年2月10日付け夕刊で、カキ養殖業を営む畠山重篤という人が国連のフォレスト・ヒーローズ(森の英雄)に選ばれたという記事を読み、おやおやまたカキ養殖業かと思ったら、何のことはない、同一人物だった。「森は海の恋人」を合い言葉に植林を続けてきたという記事を読んで、そういえば、同じような活動をしている人が書いた子供向けの本が「本よみうり堂」で紹介されていたぞと思って調べてみたら、これまた何のことはない、畠山重篤さんが書いたこの本だった(2011年7月24日付け読売新聞)。もう少し大きくなったら子供に読ませようと思ってアマゾンの「ほしい物リスト」に入れておいたのだが、これを機に購入することにした。森が海の生態系を支えているという話は前にも聞いたことがあるが、具体的には、森の腐葉土に含まれる鉄がフルボ酸鉄として海に流れ込むことが重要らしい。フルボ酸鉄に含まれるのは水溶性の2価の鉄で、それを利用して植物プランクトンが繁殖し、食物連鎖が始まるということだそうだ。シアノバクテリアが光合成を始め、その副産物として放出された酸素が海水中に含まれる2価の鉄を酸化して沈殿させてしまった結果、生物が利用可能な海水中の鉄が枯渇してしまったとか、ニック・レーンの「生と死の自然史」に出てきた話ともつながって、少々まとまりに欠ける気はしたが、読んでいて楽しかった。この本の原稿を書き上げた後、東日本大震災でお母さんを亡くし、カキの養殖場も失ったとのこと。復興を祈るばかりだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2017年9月30日
読了日 : 2012年2月12日
本棚登録日 : 2017年9月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする