1回読んだだけでは、消化しきれない部分もありますが、憲法について分かりやすく教えてくれる1冊だと思う。
「憲法とは、国民が権力を縛るもの」という定義に目を覚まされた。今までは「憲法とは国民の行動の規範」、あるいは国民を縛るものと考えていた。
「国民が権力を縛るものとしての憲法」というのは、新鮮な響き。
この言いようがもっと広く流布するならば、今のような権力者の横暴は止められるのではないだろうか、と思うけれども、それは思い過ごしなのか?
憲法9条について、
憲法に限らず普通の法律も含めて、ある法規範がつくられたときにはどういう事実がそれ支え、意味を与えていたかというのを、「立法事実」というものがある。それを考えると、9条を支えた事実は、いまだに9条を必要としていると言う著者の論はその通りだと思う。
また憲法改正派が主張する「正当防衛」について検証しているが、とても明快です。
「国家が軍事力を持ち、それを行使するということは、国家を構成する個人を兵士とし、それからまたその結果、一般人をも戦争の被害者とすることを想定しています。そういう諸個人の生命を侵害することによって、諸個人全体、国民全体の生命を保護するのだ」という理屈になる。
「国家の正当防衛の名において、自国民を犠牲にしつつ多国民への加害を繰り返してきたということは歴史上枚挙にいとまがありませんが、何よりも私たち自身の体験ではなかったでしょうか」
「攻められたらどうするか」という問題もあるが、「他国から攻められない、あるいはこちらから攻めると疑われないという、それだけの前提を満たす努力が必要。そしてそのことをとりわけ9条は要求している」という著者の論にもその通りだと思う。
- 感想投稿日 : 2012年10月27日
- 読了日 : 2012年10月27日
- 本棚登録日 : 2012年10月27日
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