ニッポン宇宙開発秘史―元祖鳥人間から民間ロケットへ (NHK出版新書 533)

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  • NHK出版 (2017年11月8日発売)
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JAXA名誉教授で、宇宙開発に関する著書を多数執筆されている的川氏による日本の宇宙開発の歴史をつづった本。
的川氏は日本の戦後初のロケット打ち上げや人工衛星打ち上げなどのプロジェクトから宇宙開発に関わってきた、まさに生き字引のような方です。「初代はやぶさ」が到達した小惑星「イトカワ」の名前の由来となった日本のロケット開発の父とも呼べる糸川英夫氏(本書2章)、日本が世界に誇るX線天文学を確立した小田稔氏(本書3章)、低予算のプロジェクトながら大きな成果をもたらし世界を驚かせたハレー彗星観測プロジェクト(本書4章)、そして「初代はやぶさ」(本書5章)など、日本の宇宙開発で画期となった人やプロジェクトについて紹介しています。
技術的・科学的な記述は控えめに、プロジェクトに携わった著者だからこそ書ける関係者の興味深いエピソードなどを交えて軽く読み通せるような内容になっています。
「打ち上げに失敗したロケットが海から陸の方へ戻ってきて、近くの農家の畑に突きささった」等という今では考えられないような牧歌的な打ち上げ風景や、火星観測プロジェクトの予算折衝で「アメリカやソ連が既にやっていることの二番煎じじゃ意味がない」と否定されたのに、初代はやぶさの予算折衝では「アメリカやロシアはやったことがあるのか?」と真逆の理論で難癖をつけられた経験など、様々な側面で宇宙開発に携わった著者の体験がたくさん盛り込まれています。
初代はやぶさ成功の原動力を「適度な貧乏が原動力だ」と表現されたのですが、潤沢な予算がない状況で創意工夫を重ねて来た日本の宇宙開発を総括した一言だと感じます。

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カテゴリ: 新書(自然科学)
感想投稿日 : 2019年6月7日
本棚登録日 : 2019年6月7日

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