僕とツンデレとハイデガー ヴェルシオン・アドレサンス (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2015年2月13日発売)
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本棚登録 : 82
感想 : 10
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 デカルトやニーチェなど8人の西洋の近代哲学者たちの教えをライトノベル風味で解説した小説。

 それぞれの章は長くないのと、哲学者の化身の美少女がそれぞれの考えを解説してくれる分読みにくさはないものの、短さと内容がギュッと詰められている分、少し分かりにくさはあったかな、という気がします。あくまでこの本は入り口で、そこから興味を持った哲学者のことを自分で色々調べてみる、というのがいいのかなと思います。

 昔からの価値観やルールが崩壊し、不安が渦巻き正解が見えない社会だからこそ、人々は正解と思われる方向に盲目的に突き進んでしまっているのかな、と思います。ちょうど自分は就職活動をしていますが、一つの会社にたくさんの学生が群がるのも、また数打ちゃ当たるとばかりに会社にエントリーしまくるのも、正規雇用が正解と思われているからなのだろうな、と思います。そして正解を求め、そことのかい離を感じてしまうあたり就職活動が嫌になったり就職鬱なんて言葉が出てくるのも当然だなと感じます。

 そんな自分にハイデガーのモーメントである「世界に正解などはない。それは与えられるものではなく自分自身の生を世界に投げかけることではじめて、それぞれにあらわれるのだ」という言葉は響きました。

 著者はこの言葉をあとがきで「正解がない、ということは逆に言うと間違いもないということでもあります」と言い換えます。そう考えると少しは生きやすくなるのかなあ、という気がしました。 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養・歴史・ハウツーなど
感想投稿日 : 2015年8月5日
読了日 : 2015年8月1日
本棚登録日 : 2015年7月29日

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