バラエティ豊かなミステリ9編を収録した短編集。
七河作品は三作目ですがこれも巧いなあ。前半はたくらみに満ちた意表を突く結末の作品が続きます。雪山で遭難した男女を描く『冷たいホットライン』や孤島で暮らす姉弟の運命を描く『アイランド』は舞台設定自体が特殊ながら、それが見事なミステリに最後には昇華されます。
過去作品では優しさの詰まった作品の多い七河さんでしたが、今回は苦い結末のものもいくつかありました。上記二作もそうですが、少年探偵が活躍する『さよならシンデレラ』もミステリとして巧いながら寂寥感の残る結末で、七河さんの引き出しの多さを感じます。
そして終盤は七河さんの優しさも感じられる短編が多くなってきます。『晴れたらいいな、あるいは九時だと遅すぎる(かもしれない)』は見事なハッピーエンドに思わずニンマリ。
八話目の『発音されない文字』は過去の七河作品と結びつきさらに物語に深い余韻が生まれます。
そして最終話『空耳の森』ですべてが結び付く感覚とともにいろいろなものがひっくり返っていきます。そして何と言っても忘れられないのは最後の数ページの感覚でしょうか。ミステリとしてのどんでん返し以上のサプライズに思わず胸が熱くなりました。
七河さんはデビュー作の『七つの海を照らす星』の中で星座の話を主人公たちにさせています。星座は夜空にある星と星を結びつけて星座としますが、今までの七河さんの作品もそうであったような気がします。
というのも各短編を星と例えるなら、それが最後に結びつきもう一つの大きな物語が見えてくるのも星座のようですし、デビュー作の『七つの海を照らす星』二作目の『アルバトロスは羽ばたかない』そして三作目の『空耳の森』とそれぞれの独立した作品が一つの大きな物語をつくるのも星座、もっと言ってしまえば大三角形と言ってもいいような一つの大きな物語が出きあがっているからです。
これから七河作品を読まれる方はぜひ『七つの海を照らす星』から読んでいただき、それぞれの星が一つの線で結びついていくのを楽しんでほしいなあ、と思いました。
- 感想投稿日 : 2013年9月6日
- 読了日 : 2013年9月6日
- 本棚登録日 : 2013年9月3日
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