これまで同様に現代人の心が抱えるものを描いたエピソードと、本作の核心に触れる兆候のあるエピソード?を収録した巻。
現代的な感覚に寄り添った作品なので、なるべく発刊からすぐ読むべきなのかなと感じた巻でもありました。
◆自撮りと承認欲求
メイド喫茶回。
承認欲求を自撮りという手段を通じて解消する、という感覚は、今風というか、時代性のある話だなと感じました。
(2023年現在からして少し古くなりつつあるのかなとも感じました。発刊から時間が経過すればするほど、手段に対しての感覚はずれていくのかな)
このエピソードの、「もしかして自分はおかしいのかな」という疑問に対して、「そのままでいいんじゃない?」という受容は、本作で最初からずっととられている姿勢ですよね。
個人の在り方が多様化しているので、年齢性別などを分けながら色々なパターンを描いてくれているのかなという印象です。
◆学校の友人との繋がり
マヒルとアキラとコウが遊ぶ中で、マヒルの台詞で印象的なものがありました。
「たまたま俺達はこうして連絡取ったりできてるけど。
タイミングが違えばずっと会わないままだったかもしれないじゃん。
それってもったいないよな。」
この台詞は、特に学校を卒業した後刺さるものだなぁと感じました。
学校でよくつるんでいた友人とも、なんとなくタイミングが合わなくて、あるいは連絡先を消失して、疎遠になっていく。
こういったこと、学校に通っている間は全く気付かなかったけど、彼らはひょんなことからそれを知る立場にいる。
大事にして欲しいなと思います、色々それどころじゃなくなっているのだろうけど。
◆物語の核心へ?
コウが学校へ通わなくなるきっかけのエピソードや、教師とのやりとりなど、これから描かれるもののための前準備なのかな? と感じるエピソードがちらほらと描かれましたね。
走り始めた物語に対して、どうしてそうなったのか、そうなるまでの状況はどうだったのかが描かれることは、非常に納得感があります。
そして、整理が終わったならば、その走り始めた物語がどこへ辿り着こうとしているのか、その結果どんな影響があるのかを、改めて明らかにすることもまた、そうです。
本作では、コウが吸血鬼になることで学校での生活からよふかしする世界へ移ろうとします。
その中で、「じゃあ吸血鬼になるってどういうことなの?」という掘り下げをすると同時に、おそらく学校での普通の生活に戻そうとする重力が働く流れになるのかなと思っています。
本作では吸血鬼という特殊な存在が出てきますが、これって僕らの世界でも起きていることで、すなわち、それまでの生活を捨てて新しい生き方(本作ではさらに強調されて、一般的には選ばれない生き方)を選択するってどういうことなの? という話なのかなと思っています。
「自分のやろうとしていることをちゃんと理解してから選べよ?」という話になるのが普通な気がしますが、まぁそれだと物語的に普通過ぎるので、本作がどういう描き方をするのか、次巻が非常に楽しみです。
- 感想投稿日 : 2023年1月3日
- 読了日 : 2023年1月3日
- 本棚登録日 : 2023年1月3日
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