バウマンさんの本は最近ちくま学芸文庫でよく出るので読んできたが、今ひとつぴんと来ない部分があった。だが本書はたいへん優れた書物で、刺激的だった。
この人の文章はとても読みづらい。論理の筋道がすっきりとしておらず、明快さに欠けている。しかし我慢して読んでいくと、ここにはなかなか面白い思想が記されている。
ここでの「コミュニティ」概念は、人々が無自覚的に寄り添いあい、理解を共有している理想の原型としては、古代から近代手前までの原始的な家族・氏族・部落のイメージがあるのだろう。
しかし西洋人類史はみずからそれを破壊し、それでもコミュニティへの憧憬を抑えられずに、人工的ですぐに壊れてしまうような仮のコミュニティを製造しようとする。
近代以降の「アイデンティティ」とは、コミュニティが破壊されたことによって生まれた、とする指摘が、抜群に面白かった。
個人→集団へ、ではなく、集団→個人へ、という逆の流れだ。
最後の方で「多文化主義」が、現状として「いかにあるべきか」を決定できない隘路となってしまっているという批判も痛烈だ。
今や多文化主義は基本として把握しつつも、さらにその上で知性を働かせ続ける必要がある、ということだろう。
読みにくいのでコンパクトながら時間をかけて読んだ。しかし最近自分は集中力がないため、意味内容を取り残した部分も多いと思う。元気なときに再読したい本だ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
社会学・経済学
- 感想投稿日 : 2017年12月29日
- 読了日 : 2017年12月27日
- 本棚登録日 : 2017年12月27日
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