中尾先生が、この本に書いているように、そういえば最近、「失敗学」ってあまり聞かなくなったな、と思っていた。畑村→中尾で掲げてきた旗印が褪せてきたのか。狡兎死して・・だろうか。それともICT発達によるセンシングとアウトプットのサイクルスピードの爆速化が、ヒトの感覚に頼った「形づくりと分類」「会得」よりも手軽で役に立つ成果を生むようになったからか・・?
ともあれ、本書はエッセイのような体裁を取り、つっかかるところもなく読めてしまうが、中尾先生の長年の「モレスキン・データベース」に蓄えられた小咄も満載で、内容はとてもボリュームがある。理系のヒトでなくても全部読めるだろう。工学者として文系カルチャーには敵対心を吐露しておられるところもあり、コンプライアンス・コンサルで飯を食っているクラスタのヒトにはぜひ読んでほしい。
ところが残念なのは、工学書の棚に刺さっており、Webでの検索タグも工学であろうから、彼らの目にとまることは、ほぼ無い。できれば(森北出版には悪いが)ダイヤモンド社や日経から出版して、多くの読者を獲得してもらいたいところだったが。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
工学・技術
- 感想投稿日 : 2021年12月31日
- 読了日 : 2021年12月31日
- 本棚登録日 : 2021年12月30日
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