書店をブラウジングしていて、その表紙の目力に惹きつけられた一冊。「パタゴニア」という、『自分の仕事をつくる』でも紹介されていたアウトドア関連の製品を取り扱っているアメリカの会社です。それ故にか「我々は、返せないものを自然から借りてしまった」として、広い意味での「社会」、、自然、環境、地域、顧客、従業員など、企業活動に関わる「全てに対して責任を果たしていくこと」を、ミッションステートメントしています。
その上で、それを実現していくためには「自分の環境負荷を知る、改善を心がける、得た知識を共有する」必要があるとして、今までの大量生産&大量消費は企業の利益には直結するが、ただそれだけであって、今後はその他の環境(労働、自然、地域等々)へのダメージを考えていかねばならないのではないかと、言われてみれば納得のいく内容です。。
といっても、会社のはじまりからその境地に至っていた訳ではなく、そこに行き着くには様々な試行錯誤があり、失敗をしながらも、継続して新しい価値観や知識を入れながら、徐々に形成していったようで、本書はその経緯も踏まえて丁寧に紐解かれています、、興味深く読めました。
と、なんとも重い「社会的責任」と真摯に向き合っているような会社なのですが、その一方では、「仕事を通じて元気になりたいと願うものだ」として、社員をサーフィンに行かせようなんて精神も持つ、なんともフランクな会社だったりもします。どこまで意識しているのかは不明ですが「儲かる会社にしたいのであれば、いまいる社員が一生懸命、喜んで働くようにするのが得策」というのを、ごくごく自然体に実現しているような会社なのかなとも、感じました。
大地の果てが有限である以上、安価な労働力の供給元にも限りがあります。未だに、消費させたいモノは溢れかえり、その消費市場は無限であるかの如く喧伝されていますが、徐々に「いまの生活給はもう少し基準が低く、四人家族を支えられる額の半分をひとりが稼げるようにすべき」と、現実での生活規模の伸び代の限界も囁かれ始めています、、カエサルの言う「人は見たいものしか見ない」とは、全くもって真理なのかなぁ、、なんて。
さてそんな中、大量生産・大量消費の既存ビジネスモデルは合致するのだろうかとの疑問を持ち、「自然が再生できる範囲に自然の消費を抑える」として、「五つのR」、「リデュース(資源消費を削減する)」「リペア(修理して使う)」「リユース(再利用する)」「リサイクル(再生する)」「リイマジン(再考する)」を提唱しているのが、パタゴニアになります。
目先の売上(利益)に囚われがちなコトが多い中、「企業は、顧客が心の底から欲しいと思うモノを売るようにすべきである。」として、長く良いものを継続的に適正な価格で提供し続けようとの理念と、実践できているのが素晴らしい。。そして、そういった積み重ねがあるからこそ「財布のひもを締めねばならない場合、尊敬・信頼する会社から買おうとする」と、自信を持って言い切れるのでしょう、選ばれるのは「私たち(パタゴニア)だと」、うーん、見習いたいところです。。
個人的には、冒頭で述べられている「日本基準」というのがかなり意外でした、、頑張らないとなぁ。。また「トリプルボトムライン」、CSRの考え方の延長のようですが、、今後日本でも会計方法の一つとして浸透していくのでしょうか、ちょっと見ておきたいかなとも感じました。
「五つ目のRは、ほかの四つを支える土台のようなものである」ともありますように、常に考えて、柔軟に対応していく必要があるのかな、、と。なお、「企業の社会的責任」の国際規格であるISO26000に、日本も2012年から参加しています。
そういった意味でも、「企業の社会責任」と真摯に向き合っていく必要があるのだろうなぁ、とあらためて実感です。また、それを遵守していない企業は生き残れなくなっていくのかな、、とも。
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- 感想投稿日 : 2012年12月28日
- 読了日 : 2012年12月12日
- 本棚登録日 : 2012年12月9日
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