映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

著者 :
  • キネマ旬報社 (2011年8月29日発売)
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本棚登録 : 448
感想 : 24
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映画やアニメなどの映像作品とは何か、について改めて明確な定義づけをしてくれる本でした。絵画などの固定した一枚絵の芸術と違って、画面内の動きや構図の切り替わりによって登場人物の感情の変化を表現するもの。そう考えた時に、その表現は全てが感性で生み出されるのではなく、人間共通の心理構造に基づいた「原則」に従って作られる必要があります。

本書を読んでその原則を意識しながら作品を鑑賞すると、今までと違った見え方がしてきます。例えば、「今あえてイマジナリーラインを超えた。それによってキャラの心境の大きな変化が表現されてる。違和感がないように、ちゃんとカメラが回り込んでいる。」といった具合です。

毎週放映のアニメ業界で戦ってきた富野監督の言葉だけあって、映像業界以外の仕事一般にも活かせそうな教えも散りばめられています。まずラフに終わりまでラフなコンテを描いて全体像を煮詰め、それによって実務に入ってからのやり直しのリスクを減らす。職人が体系化をしないと、業界全体が発展しない、などなど。

一枚絵のレイアウトを描く、綺麗な絵のコンテを頭から書いていくなど、本書で批判されている作り方がまさに宮崎駿監督のスタイルなのが面白かったです。おそらく原則を無視した超天才のなせる技なのでしょう。

デジタル技術が発展して作業が楽になった結果、とにかく動かして映像の原則を無視する作り手が増えたというような批判は、昨今の超絶作画クオリティで動かしまくるが感情表現が貧弱な作品を見ていると納得の指摘です。

いっぽう本書の唯一の難点は、富野節の文章がとにかく読みにくい点です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 芸術
感想投稿日 : 2022年12月3日
読了日 : 2022年11月29日
本棚登録日 : 2022年12月3日

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