■自動車板金工の穂高は悩んでいた。行きつけの歯医者で親知らずを抜くことになったのだが、担当の歯科医・三和がすごくこわい。ところが仕事のオフの日にスーパーで出会った三和は、ぶつけられて自分の車を凹まされてもおっとり笑っているような、とんでもない好青年だった。そのギャップに戸惑いつつ、凹んだ車の修理を請け負うことになり、白衣を脱いだ三和との親交を次第に深めていく穂高だったが、ある日街角で、旧友に金を無心されている三和を見かけ……という話。無骨な熟練板金工×二面性のある高学歴歯科医。
■友人から「榎田尤利の文章はいいらしいぞォ!」と教えて頂いたので買ったもの。なるほどすごく文章が巧い!
■穂高が、もーーーーーーーーーーーーすごくかっこいい。そうそうこれこれ!こういう攻めがいいんだよ!(でれでれとにやけつつ
■三和もなかなかにかわいい。何かにつけて短気で直情的な穂高と、「怒りたくてもどう怒ればいいのかわからない」三和、という対比も面白い。三和がそう考えるに至ったのはこれまでの出自によるところが多いんですけど。心を許せる恋人を得たことで、やがて自分の気持ちを率直に示す勇気を手に入れていく……という流れが、なんというか王道の恋愛成長物語という感じで、とても好きです。高校時代の三和の初恋相手(男)がその気持ちを逆手にとって金を無心しに来たり、昔のセックスフレンドがよりを戻そうと迫ってきたりといろいろあるわけですけど(こう書くといかにもBLだな)、クライマックスで三和が、おっさんセフレに対して静かに怒りを燃やして粛々と脅迫(?)するシーンが、なんだか成長が感じられていいですね。
■全編にわたって王道のBL。だがそれがいい。高い文章力で王道を綴られるとこんなに安心して楽しめるんだなあ。いやあ、いい読書だった
- 感想投稿日 : 2016年2月5日
- 読了日 : 2016年1月2日
- 本棚登録日 : 2016年1月2日
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