ポアンカレ予想 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2014年9月27日発売)
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感想 : 20
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歴史的な難問であるPoincare予想に関する歴史的な背景及び問題を説いたPerelmanの人物像と解答のざっくりとした流れが記載されている一冊である。

少し前にNHKでPoincare予想のドキュメンタリーが放映されて、宇宙の形を決める問題とかPerelmanの不思議な人物像が話題になったのは記憶に新しい。

Pincare予想とは、簡単にいってしまえば「多様体上のあらゆる閉じたループを一点に縮めることができる3次元多様体は球面と位相的に同相である」という主張である。
一般の方は、多様体とは、位相とは、同相とはということを理解する必要がある。これがわかっている読者は本書をほとんど読む必要はない。(問題の歴史的な経緯が知りたければ、もっと適当は書籍があるのかと思う)

位相幾何学を学ぶとこの主張内容は素朴で、自然に疑問として湧き上がる命題であるが、それを数学的に証明するとなると非常に非常に難しい。

Poincare予想の二次元バージョンならば簡単で、二次元多様体は位相的には球面とトーラス(いずれも立体の表面)しかないので、トーラスは一点に縮めることができないループが存在するため、一点に縮めることができる多様体は球しかない。
しかし、これが3次元となると直感的に扱いにくい。三次元多様体を埋め込むためには4次元以上の空間が必要で、これは我々の宇宙のモデルに近いがそれを頭のなかでイメージするのは難しい。
そして、3次元多様体は、二次元多様体の時と同様に全ての多様体を有限個に分類することができるのであろうかという問題も面白い。
ちなみにこれはズバリ有限個に分類することができ、8つに分けることができる。Thurstonの幾何化予想と呼ばれ実はPoincare予想を包括している。
Perelmanはこの予想も肯定的に解決してPoincare予想も解いたのである。

位相幾何学は名の通り、物体を伸び縮みさせても変わらない構造上の性質を研究する学問であり、物理学的な応用も広く、とくに素粒子理論方面に活用されている。

ちなみに、Poincare予想を解くと宇宙の形がわかるというのは当たらずといえども遠からずであり、地球から紐を持ってスタートして再び戻ってきた時に、その紐が回収できるのであれば宇宙は球体と同相といえるが、その経路を無限に調べないといけないので、実際はこの方法では調べることができない。
(現在は銀河規模で距離は計測し、その曲率を精緻に計算している。それによると、宇宙の形はほぼ平面であるらしい)

この問題に対して挑戦した人の歴史もまた、面白く書かれているので、この手の本を読んだことがなければお薦めしたい。
ただし、数式をほぼ使用していないので、逆にわかりにくい表現となっているので、一般の方はそれらはそんなものか、という軽い感じで読み進めれば良いと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2014年10月19日
読了日 : 2014年10月19日
本棚登録日 : 2014年10月8日

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